自民党総裁選に出馬表明している岸田文雄政調会長(63)が5日、党本部で日刊スポーツなどのインタビューに応じた。

選挙戦は菅義偉官房長官(71)が優位とみられ、厳しい戦いを迫られている。それでも、自身を将棋にたとえるなら王将、大ファンでもあるプロ野球の広島カープと同様に、日本一=日本のリーダーを目指すとし、継続して努力することを誓った。

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父親の影響もあって、小学生時代から広島カープの大ファンだ。「これくらいサービスしないといけないかと思って」。岸田氏は元カープのエース、黒田博樹氏(45)のユニホームを羽織り、チームカラーの赤色のマスクと、サービス精神にあふれる姿で登場した。

前回18年総裁選でポスト安倍の有力候補と目されながら、安倍晋三首相(党総裁)の3選を支持。今回も当初は、首相から後継を期待されたが支持を見送られ、主要派閥はこぞって菅氏支持に回る結果になった。

「いろんなことがありましたが、1つ1つ挙げてもきりがないし、政治の世界ですから、いろんなことがある。そう思わないといけないと思う。引き続き、前向きに生きることが大事だと思っています」

厳しい戦いを迫られている自身を、カープのこれまでの道のりに重ねた。

「何度か日本一になった後、厳しい時代が続いたし、最近はリーグ3連覇を果たしたが、日本一にはならなかった。人生はいいことばかりではない。カープの歴史を見れば、よくない時の方が圧倒的に多い。必ずや近いうちに、日本一になれると思っています。日本一を目指して頑張ってもらいたいですし、自分自身もその姿に重ねてしっかりと努力していきたい」

将棋の駒に自身を例える質問に、菅氏は3日のインタビューで「香車」と答えた。岸田氏は「王将を目指して総裁選を戦っています。王将を目指す努力をする身でありたい」と話した。

厳しい戦いだが、裕子夫人の存在も支えだ。「32年一緒にいますが、一緒にいるのは3分の1程度。政局の話はしませんが、つまらない愚痴はしょっちゅうこぼすし、ちょくちょくケンカもしますが、仲直りできるところが夫婦。なくてはならない存在です」。

発信力も課題といわれるが、最近はツイッターで「#キッシー」と検索タグを付け、愛称を浸透させようとしているほか、親しみやすさをアピールしている。「政策はもちろん大事ですが、どんな人間なのか、国民の皆さんの大変大きな関心事だと感じている。さまざまな形で、私のことを理解していただけるようにしていきたい」と語った。

厳しい戦いも気持ちを折らず、前に進む。丁寧な語り口同様、課題を1つ1つクリアする努力を着実に重ねている。【近藤由美子】

◆岸田文雄(きしだ・ふみお)1957年(昭32)7月29日、東京都生まれ。早大法卒。日本長期信用銀行勤務後、父・岸田文武衆院議員秘書を経て、93年衆院選で初当選。以後、9回連続当選。安倍首相とは初当選同期。外相、党国対委員長などを歴任。外相時代、前任者の辞任に伴い防衛相を1週間、異例の兼務。祖父も衆院議員、宮沢洋一元経産相はいとこ。裕子夫人との間に3男がいる。広島カープファン。広島1区。