自民党の菅義偉総裁(71)が16日、衆参本会議で第99代首相に選出された。病気のため、任期途中で辞任した安倍晋三首相(65)の後継として2012年12月以来、7年8カ月ぶりの新政権となった。自民、公明党連立の新内閣が発足したが留任(再任含む)15人、平沢勝栄復興相(75=二階派)ら5人が初入閣するなど派閥人事の色濃く、サプライズ起用もなく、安倍政治を継承する顔ぶれとなった。

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菅首相と当選同期の平沢氏が念願の初入閣を果たした。当選8回。自民党総裁選では菅氏の推薦人名簿に名を連ね、何度も閣僚候補に上がった二階派の「入閣待機組」の1人だった。「今度は大丈夫だと思います」。首相指名後、復興相起用決定の電話を都内の派閥事務所で厳しい表情で待った。

決定の電話を受けると「今まで空振りが続きまして。やっと入閣してホッとしています。個人というより、私が入閣しないと死ねないと言って、頑張った人がいっぱいいるんだから」と喜んだ。一方で「気持ちは(うれしい気持ちと)半分半分。責任の重さを痛感しています」と気を引き締めた。

東大在学中の2年間、当時小学生だった安倍晋三前首相の家庭教師を務めていたことで知られる。当時、安倍氏を定規でたたいてしかったエピソードも有名だ。かつての教え子と家庭教師の関係から安倍氏の首相在任中、平沢氏の入閣が有力視されたが実現しなかった。入閣しない理由について「家庭教師時代に定規でたたいたから」「元家庭教師で身内みたいな存在だから、安倍氏が周囲に遠慮したのでは」などと、一部でさまざまな臆測も流れた。

警察庁に入庁後、後藤田正晴元官房長官の秘書官などを経て、96年初当選。内閣府副大臣や自民党政調会長代理、党広報本部長などを歴任した。初入閣は官僚経験もある豊富なキャリアなどが評価された形だ。

東日本大震災から9年。平沢氏は、震災で大きな被害を受けた福島県の地元新聞が、1面トップで同氏の復興相内定を伝えたことを挙げた。「期待は大きいな、ありがたいなと思います」。いまだ復興が進まない地域も多い中、被災地の期待に応えるべく、重大な任務に取り組む。【近藤由美子】