歴代首相の“天敵”といえば立憲民主党の辻元清美副代表(60)だろう。これまで287回、国会質問に立った辻元氏は、小泉純一郎氏に「ソーリ、ソーリ…」と12回も連呼して食い下がり、質問にキレた安倍晋三前首相は15年の安保問題特別委員会で「早く質問しろよ」、今年2月の予算委員会で「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばし、陳謝に追い込まれた。菅義偉首相とはどうなるのか。

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菅首相と辻元氏は96年初当選同期だ。一回り違うねずみ年で年男と年女。菅内閣発足後、辻元氏は「実は当選同期で割合お互いに意識してきたというか、国会での同じ道のりを歩いてきた」「共通点はお互いたたき上げということ。予算委員会でたたき上げ対決いきたいと思ってますので、菅さん待っててください」とツイートしている。

「そうなの。自社さ政権で一緒で、私も野中広務さんとか古賀誠さんとか加藤紘一さんとかにかわいがってもらいましたけど、菅さんも同じような人たちと非常に親しいんですよ。ザ・自民党というか、党のたたき上げ。安倍さんのように自分は総理だから党も言うことを聞けとか、国民に『こんな人たちに負けるわけにいかない』とか、そういうことはなさらないんじゃないかなと思いたい」

安倍氏とは激しく対立。自席からヤジを飛ばされた。「私ごときの発言に抑えられない。おじいちゃん、大おじさんが総理大臣で、お父さんが外務大臣。政治家一家のボンボンなんですよね。少し気に障ることがあると、ヤジ飛ばしたり、質問に答えずに怒り出す。ああいうタイプの人って、ほかの仕事できないよね。自民党では7年8カ月持ったけど、社長とか上司があんなのだったら、その会社は持たないよ」。

「菅さんの支持率が高いのは、『安倍疲れ』じゃないかなと思ってる。少なくとも世襲ではなく、大金持ちでもない。安倍政権は政策の議論に入る以前に、次から次に疑惑が出てきたし、イデオロギーに支配されていたと思うんですよ。菅さんはイデオロギーはなさそうなので、ニュートラルに個別の政策の議論ができるんじゃないかな」

菅氏とは15年6月、衆院安保法制特別委員会で論戦している。官房長官会見で「集団的自衛権の行使は合憲だとする憲法学者はいっぱいいる」と発言した菅氏に対し、辻元氏が「学者の名前をいっぱい挙げて下さい」と迫ると、菅氏は3人の名前しか挙げられず「数じゃないと思いますよ」と答弁した。「迷答弁というか珍答弁というか、大爆笑になった(笑い)」。

菅氏に対し、懸念していることはある。「総理になってすぐ、竹中平蔵さんに会った。小泉政権のときに竹中さんと組んでやった規制改革は、何でも規制改革すればバラ色になるんだというような社会ビジョンだった。小泉さん時代に逆戻りしちゃうんじゃないかと心配しています」。

菅氏は「自助・共助・公助」をうたう。まず最初が「自助」だ。「たたき上げタイプの人には、2種類あるんじゃないかと思う。自分も努力して成功したから、努力しないヤツは認められないというタイプと、自分は大変だったけど多くの人に助けてもらってここまで来た。だからしんどい人が出ないように一緒にやっていこうというタイプ。菅さんとか橋下徹さんは、前者のような感じがするんですよね」。【中嶋文明】

◆天敵VTR 今年2月12日、辻元氏は衆院予算委員会で首相補佐官と厚労省審議官のコネクティングルーム宿泊問題などを追及。「ここまできたら原因はタイの頭。頭を変えるしかないんじゃないですか」と質問を終えたところ、安倍首相が自席から「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばし、2月17日、陳謝した。辻元氏は同日、ANAインターコンチネンタルホテルの「見積書、請求明細書を発行しないケースはない」「宛名空欄の領収書を発行することはない」などの回答を元に「桜を見る会」問題も追及した。

◆辻元清美(つじもと・きよみ)1960年(昭35)4月28日、奈良県生まれ。早大在学中に国際的な市民交流を目的としたNGO「ピースボート」を設立。96年、社民党で衆院初当選。当選7回。屈指の論客で国会質問は287回。歴代11人の首相と論戦を交わした。立民では結党時から約2年、国対委員長を務め現在副代表。最新刊に「国対委員長」(集英社新書)。