米大統領選で劣勢になった共和党の現職トランプ大統領(74)が、徹底抗戦に打って出た。東部ペンシルベニアなど3州で法的措置に踏み切り、中西部ウィスコンシンで再集計を求める方針を出すなど“悪あがき”ともいえる対抗措置を取った。最終盤、民主党バイデン前副大統領(77)は激戦州のウィスコンシン、ミシガンで逆転。選挙人の過半数(270人)獲得にあと1歩まで迫り「集計が終われば我々が勝者になると信じている」と強調した。

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敗北は絶対に認めない-。言葉にしてはいないが、トランプ氏の心の叫びが聞こえそうな動きだった。じわじわと追い詰められたトランプ氏は現地時間4日、開票作業への不信をにじませ「夕べは多くの州で私がリードしていたが、魔法のように次々と消えた。とても奇妙だ」「(ミシガン州などで)ひそかに大量の投票用紙が捨てられていた」と、一方的に次々ツイッターに投稿した。

票が開くにつれ、自身が不利になる「レッド・ミラージュ(赤い蜃気楼=しんきろう、共和党カラーは赤)」の現実に直面したトランプ氏。米メディアは「意気消沈している」と報じた。陣営は次々と対抗措置を連発。ミシガン、ペンシルベニア、ジョージア各州で、集計差し止めなどを求めて提訴。開票作業が公正か監視する場所にアクセスできないと訴えた。ペンシルベニアでは、郵便投票の到着期限を3日延ばす決定を覆すよう求めて法的措置。ウィスコンシンでも「正当性に深刻な疑い」があるとし、再集計を求めるという。同州は得票率差が1%以下なら再集計申請できる。

バイデン氏は開票最終盤に追い上げた。トランプ氏リードだったウィスコンシン、ミシガンで逆転勝利。共和党が強いジョージアでもみるみる肉薄した。米メディア集計の獲得選挙人は253人や264人の数字が並び、当選に必要な過半数獲得を射程に入れた。

コロナ禍で激増した郵便投票が効いた。民主党支持者の利用が多く処理に時間がかかるが、集計終盤に票が積み上がる傾向がある。

すでにバイデン氏は「選挙後」を見据える。4日、地元デラウェア州の演説で「270人の選挙人を獲得するために必要な州で勝つことは明らかだ」と、勝利に自信をみせた。陣営は、政権移行チームのサイトを立ち上げ「政権発足初日から全力で取り組む」とするコメントを寄せた。

ただ、トランプ氏の法廷闘争次第では「最終決着」に時間がかかりそうだ。ブッシュ氏とゴア氏が争った00年大統領選は、フロリダ州の集計をめぐる訴訟が連邦最高裁まで争われ勝利確定に1カ月以上を要した。トランプ氏が徹底抗戦を貫けば混乱が続きそうだが、その作戦には共和党内でも批判が広がりつつある。