JA東京中央会は24日、都内JA代表候補者14人が集った「農業男子×総選挙」の投票結果を発表し、岡田啓太さん(32=JA東京むさし)の1位が決まった。2位は金子倫康さん(JA東京みどり)、3位は高橋徹さん(JA東京あおば)。13万8052票の中から選出された3人は「広報大使」就任が決定し、東京の農業を盛り上げる活動にも尽力する。

岡田さんは日本社会人アメリカンフットボールリーグ(Xリーグ)LIXILディアーズに所属する、アスリートと農業男子の「二刀流」だ。16年12月、結婚を機に農業の道へ。江戸時代から約300年続く、妻の実家「岡田農園」を15代目として継いだ。総選挙での「体格もやさしさもヘビー級」のキャッチフレーズ通り、186センチ、105キロの体格は、新日本プロレス棚橋弘至も上回る。現役バリバリな義父の指導も受けながらタッグを組む。「畑違いの仕事でしたが、妻は1人娘ですし、男手が必要だったので、ぜひやらせていただこうと思った。代々続いている農業を守らなくてはいけない。新しいことにチャレンジ出来るきっかけでもあった。これからは広報大使としても東京の農業をピーアールしていきたい」と意気込んだ。

夏は午前4時に起床し、野菜の収穫や袋詰め。午前9時には直売所や自動販売機などに商品を届ける。畑の管理作業を終えれば少しだけ昼休憩。午後は種をまいたり、苗を植えるなど作業は日暮れまで。その後、アメリカンフットボールのチーム練習や、自主トレーニングの時間に費やすハードな日々だ。「農作業は重労働なところもありますが、体力には自信がある」と、今が旬のキャベツ、白菜、カブなどを太い腕で抱える。義父や農業の先輩たちと協力しあう作業も多いため「次に何をしなくてはいけないかを感じる力はアメリカンフットボールで身に付いたもの。アジャスト能力、応用力、スポーツ選手としてアンテナを張ることも農業に通じている」。DL(ディフェンスライン)として日本代表にも選ばれた経験も生かす農業男子代表だ。

都内の農業人口は決して増加しているとはいえない。後継者不足で従事者の高齢化で閉業する農家も多い。それだけに若い力で、普及活動への闘志を燃やしている。都内は畑が住宅街の中にある場合が多く、「常に見られているプレッシャーがある一方で、常に顔の見えることがメリットでもある。通学中の小中学生が声をかけてくれたりすることも喜び。安心、安全な国産野菜を作り続けることが、まず一番大事なこと。そして、食べ残しをしないようにとか、食の大切さなども子どもたちに学んでいただけたらうれしい」。現在は、年間約30種の野菜栽培や販売以外にも、学校給食への提供や、農業体験、農業や食育の出張授業などにも取り組んでいる。自身も農業を始めてから「季節野菜の最高の味を知った。夏のトウモロコシは生で食べてもおいしく、甘みには感動した」。実体験で得た東京野菜の魅力を伝える使命感にもあふれている。

都内の農業の役割は多岐にわたる。「災害時の緊急避難場所でもあるんです」。野菜の栽培や販売、食育、緊急避難場所、水害防止、休日レジャー、癒やし、CO2削減。肉食男子だった男が、野菜とのバランスを得た農業男子に生まれ変わった。東京の農業を守り、さらなる普及、発展に突き進む。【鎌田直秀】

 

◆岡田啓太(おかだ・けいた)1988年(昭63)1月21日生まれ、東京・杉並区出身。日大三、日大とアメリカンフットボール部で躍動し、卒業後はXリーグで活躍中。JA東京むさし(三鷹市、小平市、国分寺市、小金井市、武蔵野市)に所属。農業従事前の職業は大手ゼネコンの現場庶務全般。186センチ、105キロ。好きな食べ物はステーキ。家族は妻と2児。血液型O。