新型コロナウイルス感染拡大による成人式の中止や延期に伴い、いつ開けられるか分からなくなった「タイムカプセル」が、各地で続出している。

東京都23区で、唯一成人式を開いた杉並区の新成人からは「小学生の時に埋めたタイムカプセルを開ける予定だったが中止となって寂しい。いつか開けたい」との声が上がっている。

福島県白河市の市立釜子小では、6年生時に写真や作文、思い出の品をタイムカプセルに入れる行事が10年以上続く。深谷麻紀教頭によると、毎年、成人式後の懇親会で新成人が受け取ることが恒例となっていたが、今年はコロナ禍で成人式が延期となり、タイムカプセルは学校の屋上の倉庫に保管したまま。開ける予定は決まっておらず深谷麻紀教頭は「こういう状況下ですので、子どもたちが取りに来る日まで大切に取っておきたい」と語った。

釜子小を卒業した新成人で栃木県の大学に通う藤田凌さん(20)は複雑な心境だ。タイムカプセルの中には「県のソフトボールの大会で優勝したときにもらったメダルを入れました」と振り返ったが「当時好きだった女の子からもらった手紙も入れた気がします。それを見るのは恥ずかしいですけど、いつ誰に見られるか分からないので、早く受け取りたい」と苦笑いを浮かべた。

山梨県甲府市の駿台甲府小では、市が成人式を見合わせたため、式後に学校で予定していた「タイムカプセル開封式」も中止。タイムカプセルは学校が開封し、中身を新成人約70人の自宅に配送することにした。【沢田直人】

 

○…タイムカプセルは近年、劣化や紛失を防ぐため土には埋めず、業者に委託するケースが多い。

08年からタイムカプセルや未来への手紙の配送代行サービスを手掛けている特定非営利活動法人「みらいねっと」の代表の下原昌文さん(50)は「地中に埋めるなら、1メートル50センチ近く掘らないと長期の保存ができない。人の手では難しい」と説明する。

みらいねっとでは、今年開ける予定だったカプセルの8割は各個人宅への配送希望だったが、残りの2割は学校や同窓会場への配送希望だった。成人式の中止などで、会場への配送希望分のうち、およそ25%は配送先変更の連絡があったという。下原さんは「コロナ禍で人が集まりにくい状況なので、卒業生や保護者の代表が一時的に預かることが多いようです」と話した。