東京・池袋の都道で19年4月に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第4回公判が19日、東京地裁で開かれた。この日は、飯塚被告の車の、衝突時の速度とブレーキランプの点灯について鑑定書を書いた、警視庁交通部の捜査員が検察側証人として出廷し、尋問が行われた。飯塚被告は起訴内容を否認している。

被害者参加制度を使って裁判に参加した、真菜さんの夫の松永拓也さん(34)と父の上原義教さん(63)は公判後、会見を開いた。松永さんは会見で、有給休暇を消化して公判に参加していると説明した上で、裁判員裁判の際、労働基準法で認められている特別休暇制度と同様の制度を設けるよう、自身も名を連ねる関東交通犯罪遺族の会(あいの会)として厚労省に働き掛けていく考えを示した。

松永さんは「会社にサポートしてもらい、ご配慮いただいている。ただ被害者参加制度については、犯罪被害者にも休暇を与えて下さいというお願いベースで明確なルールがない以上、会社はルール作りがしにくい」と状況を説明。その上で「自分の会社を責めているわけでなく、今後のためにルール作りをし、就業規則を作ったり改訂する際、ルールを作りやすくする社会にして欲しい。被害者、遺族の立場になった人が、裁判員裁判のように特別休暇が認められる社会になって欲しいと要望します。厚労省と連絡を取り合いたい」と語った。

松永さんの弁護人の高橋正人弁護士は、厚労省が2005年(平17)に1度、犯罪被害者等基本原則検討会で話がなされていたと説明。その上で「(検討会で)1年以内に前進させると約束したが、15年たっていて何も進んでいない。言ってみれば厚労省の怠慢だと思う。例えば努力義務、次は義務化、罰則と段階を踏めば良いが、第一歩すら踏み出していない」と厚労省の対応を厳しく批判した。

松永さんは事故当時を振り返り「妻と娘が事故に遭い、心の痛みと向き合わなければいけない中、葬儀もしなければならない、役所にも行かないといけなかった。与えられた休暇は忌引の3日間だった」と説明。その上で「1カ月間、心理的、物理的に会社に行けなかった。その間、いろいろ休暇を何とかつなぎ合わせた。もし休暇が、たまたまなければ、心理的な回復は出来なかったと思う。これから犯罪被害者、遺族になる方には、同じ思いをして欲しくないので私は行動したい」と語った。

厚労省に働き掛けを行う具体的な日程は今後、決めていくという。高橋弁護士は「法改正を伴いますので、最終的には法務省に意見書を出す予定です」と説明した。