米国の第45代大統領ドナルド・トランプ氏（74）が任期最終日、復権への意欲をみせながら、ホワイトハウスを去った。就任式前の20日朝に、4年間過ごしたホワイトハウスを出た。米主要メディアによると、赤いネクタイ姿で姿をみせると「長い別れでないことを願う。また会おう」と話し、大統領専用ヘリコプター、マリーン・ワンに乗った。

首都ワシントン近くの基地での退任式典では、関係者らを前に「さまざまなことを成し遂げた。私は常にあなたたちのために闘う」などとスピーチ。「我々は何らかの形で戻ってくる。すぐに再会しよう」と締めくくって、大統領専用機エアフォース・ワンでフロリダ州パームビーチの邸宅に向かったという。

米メディアは、トランプ氏がホワイトハウスにバイデン氏宛てのメモを残したと伝えたが、就任式は欠席し、バイデン氏との直接のやり取りはなかった。就任式では平和な政権移行を象徴するとして新旧大統領の同席が慣例。現職の欠席は152年ぶりといい、退任も極めて異例の形となった。

前日の19日には、お別れメッセージを発表。ここでも「私たちが始めた運動はまだ始まったばかりだ」と述べ、24年大統領選に向けて政治活動を続ける意欲をうかがわせた。声明では新政権に対し「米国の安全と繁栄を維持できるよう祈っている」とエールを送ったが、バイデン氏の名前は一切口にしなかった。一方で自分の実績を列挙。「大統領選に勝利した唯一のアウトサイダーとしてワシントンに来た」と表現し「世界史上最も偉大な経済を築いた」などと自画自賛した。

退任後も、支持者による議会襲撃事件について扇動したとの責任追及が続く可能性があり、連邦議会では上院での弾劾裁判の行方が焦点になる。仮に有罪ならば、公職への立候補を禁じる採決が行われる可能性もある。声明では「数十年で新しい戦争を始めなかった唯一の大統領であることを、特に誇りに思っている」とも強調。襲撃事件も「政治的暴力は、我々が大切にするもの全てへの攻撃で、決して許されない」と非難しており、追及をけん制する狙いもにじんだ。

20日には、側近だった保守派のバノン元首席戦略官ら73人に恩赦を与え、70人を減刑したと発表した。右派からの支持を維持する狙いがあるとみられる。米メディアによると、自身や家族への予防的恩赦も検討したというが、含まれていなかった。退任後も言動が注目される。