愛称は「ガースー」ではなく「ヨシ」だった。28日未明に菅義偉首相はバイデン米大統領と電話会談を行い、お互いをファーストネームの「ヨシ」と「ジョー」で呼び合うことで合意して、親密外交のスタートをアピールした。12月のネット番組で「ガースーです」と名乗ったウケ狙いは空振りだったが、「ヨシ」で巻き返しを狙う。

約30分間の会談では日米同盟を強化して「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて両国が緊密に連携する方針を基軸として確認された。バイデン氏は、沖縄・尖閣諸島が、日米安保条約第5条の適用対象として米国に防衛義務があることを改めて明言した。

菅首相とバイデン氏の電話会談は昨年11月以来、2度目で28日の参院予算委員会で菅首相は「バイデン氏と個人的な信頼関係を構築しながら、緊密に連携を取り、国内外の問題を前に進めたい」と強調した。

だが、コロナ禍の中で開催に黄色信号がともる東京五輪・パラリンピックは話題に上らなかったという。国会質疑や答弁でも開催の可否や是非が飛び交う中でスルーしたとすれば、あまりに不自然だ。外交経験の少なさから「外交オンチ」とやゆされる。菅首相の責任論も浮上しそうだ。

27日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は東京五輪・パラリンピック組織委員会で理事を務める高橋治之氏が大会開催について「米国次第」と発言し、バイデン大統領が開催に対して前向きな姿勢を示すか、どうかにかかっていると報じた。菅氏がバイデン氏との電話会談で五輪が話題に上らなかったとしたことについて、官房長官会見でも「不安が広がるのでは」との質問が出たが、加藤勝信官房長官は「政府としては推進していくのが基本的な立場。実施にあたっては米国はじめ、各国政府の協力が当然必要になる」と述べるにとどめた。【大上悟】