朝、登校したら校庭にエゾシカの群れが居付いていた。22日午前6時、苫小牧市矢代町の苫小牧西小学校の福岡雄司副校長が登校した際、校庭に約20頭のエゾシカの群れが動かずにジッとしているのを確認した。

そのほとんどが大きなツノを持ったオスの成獣で、雪解け水で水たまりになった場所にかたまっていたという。シカの群れは興奮状態にはなく落ち着いた様子で、しばらくするとその場に足を折り曲げて座ったようにして動かなくなる個体もいたという。

苫小牧西小では、児童の登校前だったこともあり、教諭を手分けして学校近くの交差点に配置し、駆け付けた警察官と一緒にエゾジカと接触しないように迂回路から登校させ、166人の生徒全員を教室まで誘導した。

苫小牧西小は森林や草原の広がるエリアから約2キロ離れた立地で、正門側は塀やフェンスを張り巡らせているが、逆面となる駐車場側は囲いもなく自由に出入りできるようになっている。これまで校庭にエゾシカが落としたと思われるフンが転がっていたことはあったが、シカそのものが朝まで校内に残っていたことはなかったという。

シカの群れはしばらく校庭の居心地を“満喫”して午前9時ごろ突然校庭を立ち去り、山側の同市王子町の王子製紙苫小牧工場を経由して、JR室蘭本線を越えて山に戻っていったと思われる。

苫小牧西小では19日に6年生44人が卒業したばかりで、福岡副校長は「シカ騒動が卒業式とかぶらなくてよかった。それと、残った児童たちにもけががなくてよかった」と胸をなで下ろしていた。

苫小牧市環境生活課では、冬場になると山のエサが枯渇するため、シカが里におりてくる現状が何度かあったため、注意啓発の意味を込めて「あれっこんなところにシカがいる!?」というタイトルのイラストを配布し、市のホームページ(HP)上で「シカは元々おとなしい生き物ですが、驚かせたりしてしまうと、突然走り出したりすることがあり、危ないので注意が必要です」とのポスターをつくったばかりだった。【寺沢卓】

◆エゾシカ 北海道だけに生息するニホンジカの亜種。ニホンジカよりも大きな個体で、オスは最大で150キロ前後まで成長する。4~5月、オスのツノが抜け落ちて生え変わる。満1歳では真っすぐ伸び、2~3歳から枝分れする。6~7月、若いオスは探索行動(新たな生息地等を求める放浪行動)に出ることが多くなり、メスはこの時期に子どもを出産。10~11月は繁殖が活発化する。この時期のオスは攻撃的でとても気が荒く危険。12~翌3月は個体によっては越冬地まで移動する。11~1月ごろ、夏の生息地から秋の生息地へ移動。3~4月、積雪の変化に伴って、夏の生息地へ移動する。

草食性で、1日5キロほどの植物を食す。野草や木の葉、木の芽やドングリなどを摂食。冬にはササや木の若い枝、樹皮を食べる。個体数が増加し牧草や小麦、野菜などの農作物の食害をもたらしている。

性格はとても臆病。人を襲ったりすることはない。群れで行動する習性がある。オスとメスは別々の群れを形成。跳躍力に優れ2メートル超の柵を楽々飛び越えてしまう。繁殖能力が非常に高く、出産したメスは栄養状態がよければ次年すぐに繁殖活動ができる。