新型コロナウイルスの感染拡大・まん延の影響で3度目となる緊急事態宣言が25日、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県で発令された。

“日本の食の台所”築地場外(東京・中央区)では、まばらに訪れる客対応に工夫が凝らされていた。

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4キロ離れた豊洲に市場が移転したのは、すでに3年前になる。しかし、築地場外ではいまだに時間が止まったままになっている。市場があったころは薄暗い午前5時前から開店して、午後2時にはシャッターを閉めてしまうのが「築地時間」としてまかり通っていた。

だが、このコロナ禍で街の活動する時間はシフトし始めている。中央区が管理する市場機能を持つ生鮮を含めた食料品を扱う「築地魚河岸」には約60軒がひしめきあうが、市場が閉じる休市日は休館し、築地場外の各店もやはり午後2時までにはほとんどの店が閉じてしまう。

魚介類を提供するある飲食店店主は「築地には市場がないんだよね。朝5時に店を開けても客はいない。夕方や休市の日曜にさまよう利用者は確実にいる。緊急事態宣言を機に築地時間を考え直した方がいいんじゃないか」と腕組みをした。

日曜の25日、ほとんどの店は閉じていたが、元気に商売する店舗もあって「はい、それなりにお客さんはきますよ。みんなと同じことをやっていたら売れるものも売れない」と話す店主もいる。

独自に時間をずらして営業するナッツやドライフルーツを扱う「田村商店」では「夕方手前までは営業しますね。いいものを置いてある自信はあるから、買ってもらえたら必ず次も来てくれる。ならばお客さんがいる時間に店を開けるのは当たり前だと思う。マカダミアナッツは昼前に売り切れちゃいました」と話す。

佃煮の老舗「江戸一飯田」では「緊急事態になりましたが、お客さんはいますね。しかも昼すぎに増えてきた、ちょびっとですけど。ゴールデンウイークも昼すぎからの勝負になるのかもしれませんね」と今後の客足の動向をにらんだ。

日曜でも客足の絶えることのないカレーライス専門店「東印度カレー商会」は建物の2階奥にあって「築地でもっとも分かりにくい店」と言われているが「ウチはいらっしゃったお客さんに『友だちに口コミしてね』というんです。そうすると本当に広げてくれて、地道ですが新規のお客さんが来てくれる。ありがたい。コロナ禍でも日々のコツコツはものをいいますね」と話す。

新たな商品開発にも着手する店舗もある。緊急事態宣言下では飲食店において酒類を提供できなくなるがアルコール飲料を販売していた生コショウ専門店&カフェ「築地松壱ペッパー」では、過去2回の緊急事態宣言のたびにトーストサンド、自家製生地のもちもちピザなど新商品発売で利用客を増やしていった。「アルコールを全部さげました。なので、おいしいソフトドリンク開発をします。レモンの皮を煮詰めてレモネードにする。提供する直前に生果汁と削った生コショウで香りを出す。ウチだけの何かをする。このソフトドリンクなら、酒類復活のときのカクテルの切り札にもなる」としたたかだ。

クジラ肉商品を提供する「築地の鯨(くじら)」では26日からまったく毛色の違うかき氷を新商品として投下する。「この1年でクジラ肉のお弁当だけじゃなくて豚肉や牛肉も使ってきて評判もよかった。最終的にはクジラ肉を食べてもらいたいんですけど、人の興味をくすぐる本当においしいものからクジラに誘導していきたい。今回はかき氷。フワフワにけずった氷、おいしいのができました。事前に情報を発信していますが、反応は悪くない」と新しい矢を放つことも忘れていない。

何もやっていないゴールデンウイークで、築地場外が都会のオアシスになれるのだろうか。【寺沢卓】