昨年9月の政権発足後、初の国政選挙となった衆参3選挙区の補欠選挙と再選挙を落とした菅義偉首相。

有権者の審判を受ける次期衆院選を前に「直近の民意」が示された格好だが、もともと自民党が強い保守地盤のはずの広島で、自民党が野党に敗れて議席を失った意味は大きい。

今回、最大の与野党激戦区となった広島の再選挙は、19年参院選で初当選した河井案里前参院議員の当選無効を受けたもの。当時、案里氏の擁立をめぐって対立した自民党広島県連と党本部のあつれきは今回の選挙戦でもくすぶっていたとされ、最後まで結束した「一枚岩」になれなかった側面もあるようだ。

3選挙のうち、衆院北海道2区は、自民党側が早々と「不戦敗」を決め、参院長野選挙区は立憲民主党羽田雄一郎参院議員の死去に伴う「弔い選挙」で、支持基盤が厚い「羽田王国」での戦い。「2敗は仕方ない」(自民党関係者)といわれていた。それだけに「3敗と1勝2敗はまったく意味が違う」(別の自民党関係者)として、広島の再選挙には自民党幹部らが集中して、てこ入れした。一時は楽勝ムードも出ていたが、事実上の野党統一候補の猛追を受け、結果的に敗北した。

3選挙のうち衆院北海道2区、参院広島選挙区の要因は、いつまでたってもなくならない「政治とカネ」の問題。選挙期間中の今月23日には、自民党の菅原一秀衆院議員の公選法違反事件をめぐり、菅原氏が再び任意で東京地検特捜部の任意聴取を受けていたことも表面化した。

各種世論調査では新型コロナウイルス対策を含めて、菅首相の政権運営に対する批判も根強い。政権発足から半年が過ぎても、有権者に分かりやすい「結果」がなかなか見えない現状では、菅政権への期待が高まるタイミングも難しく、首相は苦しい政権運営を余儀なくされそうだ。

一方、野党側は、激戦区の広島での与野党対決を制したことで、次期衆院選をにらみ、菅政権への対決姿勢をさらに強める構えだ。