米カリフォルニア州のニューサム知事(民主党)の解職を求める署名が必要数を上回り、今秋にもリコール投票が行われる見通しとなったことを受け、各候補者たちがさっそく選挙集会をスタートさせているが、共和党候補の一人が体重約500キロの本物のヒグマをキャンペーン要員として登場させて物議を醸している。

ディズニーの名作映画「美女と野獣」をテーマに選挙戦を展開するジョン・コックス氏(65)は、イケメンで知られるおしゃれな「美女」のニューサム知事に対抗し、自身を同州の政治を改革する「野獣」と称し、選挙戦の相棒として映画やドラマに出演するヒグマのタグを指名。一緒に州内をバスで巡るキャンペーンツアーを行うと発表し、4日に行われた初集会ではさっそくタグを横に座らせて演説を行った。

タグは飼育下で生まれ、映画などの撮影訓練を受けており、集会でもリラックスした様子で調教師からおやつをもらって食べるなどしながら演説を見守っていた。タグとコックス氏の顔が描かれた陣営のバスの前で至近距離で見つめ合うツーショットも公開しているが、「撮影用に訓練されたクマとはいえ、人間にとっては危険であり、クマにとっても非人道的だ」と専門家からは非難の声が上がっている。

動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」も「残念で、恥ずべきこと。クマをこのような形で使うべきではない」と批判している。一方、同氏の代理人は「タグが快適で安全にいられるようあらゆる注意が払われている」と米ピープル誌にコメントしている。

カリフォルニアの州旗は「ベア・フラッグ(クマの旗)」と呼ばれ、カリフォルニアハイイログマと星が描かれているが、タグはアラスカヒグマとも呼ばれるヒグマの最大亜種コディアックヒグマである。

リコール投票には他にもモントリオール五輪(76年)の陸上男子十種競技金メダリストで15年にトランスジェンダーであることをカミングアウトしているタレントのケイトリン・ジェンナーも出馬を表明している。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)