日本医師会の中川俊男会長は、26日の定例会見で緊急事態宣言の期限延長へ向けた政府方針について「具体的な目標が提示されず、かつ決定打のないまま、さらに延長されようとしている」と指摘した。その上で「医療提供体制のひっ迫度を鑑みれば、緊急事態宣言の延長に同意しますが、多くの国民は、度重なる延長に疲れ切っています。今回を最後と心得て、政府に改めて具体的な対応策を示していただきたい」と苦言を呈した。

東京五輪・パラリンピックをめぐる政府の姿勢については「開催を何とかするんだ、という方針に固まっているように認識している」と見解を述べた。また開催可否には「日本医師会として(五輪を)やる、やらない、ではなく、感染状況、医療提供体制のひっ迫度などアドバイスはしていく。最終的に判断されるのは政府」との認識を示した。

前回の異様なムードは消えた。19日は中川会長が事前通告なく、途中退席したことで報道陣から異論が上がり、担当者は釈明に追われた。中川会長が、まん延防止等重点措置が適用されていた4月20日に自らが発起人を務めた政治資金パーティーに出席、また昨年、不要不急の外出自粛要請の中で女性と外食していたことを「週刊新潮」に報じられたことへの質疑応答や批判を避けた印象を与えた。

この日は約1時間の会見終了まで、中川会長は毅然(きぜん)とした態度で対応した。五輪についても、一転して踏み込んだ。これまでは、開催可否を含めた見解について言及を避けて来たが、開催に前のめりな政府に対し、辛口で提言するなど専門家としての立ち位置を明確にした。1週間前の前回は、対応をめぐって報道陣と紛糾する場面もあった「荒波」だったが、今回は「さざ波」ほどもなかった。

【大上悟】