将棋の藤井聡太2冠(棋聖・王位=18)が3日、関西将棋会館で行われた第80期順位戦B級1組2回戦で、稲葉陽八段(32)に敗れた。順位戦での黒星は19年2月の第77期のC級1組で近藤誠也七段に敗れて以来、約2年4カ月ぶり。単独2位の順位戦連勝記録は「22」でストップした。

戦型は角換わり。藤井は稲葉の積極的な攻めを正確に受けたが、激しい攻め合いに敗れた。終局が深夜1時を過ぎる大熱戦だった。藤井は「しばらく定跡の進行が続いた。こちらの予想にない手があり、どう指せばよいのか分からなくなってしまった」と振り返った。

藤井は昨年度の前期B級2組を10連勝して昇級、前々期もC級1組で10連勝で昇級している。18年度の第77期のC級1組で近藤誠也七段(24)に敗れたのが唯一の黒星で、この期だけ昇級はならなかった。この日の黒星で順位戦通算40勝2敗。順位戦での連勝ストップし、今期の順位戦B級1組は1勝1敗。「先は長いかなと思うので、これからも次の1局に全力を尽くしたい」と話した。

実力者が名を連ね、「鬼の住処(すみか)」の異名を持つB級1組は13人が所属。総当たりで戦い、上位2人がA級に昇級する。約2年4カ月ぶりの順位戦での黒星に「B級1組は手ごわい相手ばかりなので、その中で自分の力が足りないところがあるのかなという印象です」。

順位戦は最上位のA級からC級2組までの5クラスに分かれて戦い、A級の優勝者が名人挑戦者となる。 谷川浩司九段(59)が持つ名人獲得の史上最年少記録は21歳2カ月。藤井がこの記録を更新するには、今期のB級1組を1期で抜け、さらにA級1期目で挑戦権を獲得し、名人のタイトルを奪取する必要がある。

6日からは最年少でのタイトル防衛がかかる第92期棋聖戦5番勝負が開幕する。挑戦者は渡辺明名人。前期に棋聖を藤井に奪われた渡辺にとっては、リターンマッチとなる。渡辺は、名人、棋王、王将の3つのタイトルを保持する最強の挑戦者。藤井は「非常に注目していただいている舞台になると思うので、いい将棋を指したい」と意気込んだ。【松浦隆司】