東京都議選が25日、告示される。注目区の1つは千代田区だ。前回で都議会第1党に躍進した都民ファーストの会から立候補するのは平慶翔氏(33)。女優の平愛梨と祐奈のきょうだいで、サッカー日本代表DF長友佑都の義弟としても知名度は高い。一方、巻き返しを期す自民党は「都議会のドン」と称された内田茂氏の娘婿、内田直之氏(57)が名乗りを上げた。地盤を継承しつつ、イメージ刷新も決意。わずか1議席を、義弟と義息が争う「ギリギリの戦い」が始まった。共産党から冨田直樹氏(45)、無所属で浜森香織氏(42)も出馬。投開票は7月4日に行われる。

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今秋予定の衆院選前哨戦と位置付けられている都議選。千代田区では、前回17年の都議選で都民ファ代表(現最高顧問)だった小池百合子都知事が「古い政治の象徴」と内田氏に対抗して勝利。都全体でも6議席から55議席まで増やして圧倒した。小池氏就任の16年都知事選から始まり、千代田区長選を含んだ「小池VS内田」の代理戦争を繰り広げてきた背景がある。

今年1月の区長選でも小池氏は樋口高顕氏の選挙カーでマイクを握るなどの支援もして勝利。対する自民党は内田氏が候補者を積極的に支持せず、党内に不協和音が生まれての敗戦でもあった。今回、小池氏は都民ファへの応援の是非を問われても「都政を支えていく方々にエールを送りたい」と言及せず。さらに疲労による休養で都議選への姿勢が不透明なまま選挙に突入する。

17年に小池効果もあって板橋区で初当選し、今回は馴染みのない地に国替えして挑む平氏は「小池知事、樋口区長とも連携して、千代田区から東京、日本に改革の火を灯したい」。前回の都議選で断トツの千代田区トップ当選だった樋口氏から選挙区を受け継いではいるが、東京2020に関しても、都民ファは「無観客」支持を貫いており、小池氏を含む足並みがそろっているとは言い難い。ワールドカップ(W杯)出場に加え、日本代表左サイドバックのレギュラー“1議席”に挑んでいる長友からは、家族LINEや電話で激励や助言も受けており、新天地でも負けられない戦いへの気持ちは強いが、“アウェー”感もある。

内田氏には千代田区議を10年間務めてきた“ホーム”アドバンテージがある。自民党関係者は「茂さんのネガティブな要素も分かっている。後継者というより、直之自身が選挙の時だけでなく積み重ねてきた地域との関係は強み」。区でサッカー、軟式野球など数多くの協会や連盟で役職に就き、盛り上げてきた。義父も事務所に訪れるなど陰ながら支えている。ちなみに鹿島やドイツなどで活躍したサッカー元日本代表右サイドバック内田篤人氏が推しメン。どちらが区民へ“アシスト”出来るかが問われる選挙となるか。

今回の都民ファはワクチン接種のスピード化を訴えるが、公明党の支持を得られない逆風も吹く。今も基盤は固い自民は街づくりを掲げる。オリンピック(五輪)中止も訴える共産党関係者も「自民でも都民ファでも変わらない。新しい流れは千代田から」と野党として立ちはだかる。票においても「ギリギリ」の接戦となりそうだ。【鎌田直秀】