囲碁界の最年少プロの仲邑菫二段(12)が、国民栄誉賞棋士の井山裕太棋聖(名人・本因坊=32)に手荒い洗礼を受けた。29日、都内のスタジオで行われた非公式戦「第1期新竜星戦」1回戦で対戦し、井山に黒番中押し勝ちを許した。序盤から劣勢に立たされると、リードを詰められないまま圧倒された。「ボロボロになってしまいました」と、終局後に大先輩と並んで臨んだ会見では苦笑いするしかなかった。

両者は2年前の1月、井山の出身地である大阪府東大阪市で行われた囲碁のイベントの公開対局で対戦している。終了時間が迫ってきたため、「打ち掛け」(引き分け)となった。非公式戦とはいえ、初めて黒白がついた。

仲邑は今年すでに31勝10敗で、最多勝も狙えそう。女流立葵杯ベスト4、女流本因坊戦ベスト8など、女流棋戦で挑戦権獲得まで手の届きそうな位置に来ている。井山は「(自分がこの棋戦で当たりそうな)予感が何となくしていました。ご自身の努力やプロ入り後の経験を生かして、勝ちに結び付けている。悪くしても粘るというのが成長したところ。勝負師として1番大事な要素を感じている」と評した。

この棋戦は持ち時間各1分、1手打つごとに5秒加算される「フィッシャー方式」の早碁。32人による勝ち抜き戦となる。ともに対局を前に練習としたというが、「練習よりも速く感じて、秒に追われた」(仲邑)「30歳を超えて反射神経の衰えを感じました」(井山)と笑った。

参加資格があるのは、第29期竜星戦決勝トーナメント進出者(16人)、過去の竜星戦優勝者(8人)、昨年の女流タイトル戦優勝者、準優勝者と、過去の女流棋聖戦優勝者(6人)に、特別推薦2人。仲邑は特別推薦枠、井山は決勝トーナメント進出組での出場となった。

東京五輪の卓球を見たり、スケートボード女子ストリートで13歳の史上最年少金メダリストとなった西谷糀に刺激を受けた仲邑、夏休みは囲碁漬けとなる。付け入る隙さえ見せず、危なげない打ち回しで快勝した井山の「愛のむち」は、「強くなりなさい」と第一人者から申し渡された宿題になるのかもしれない。