将棋の渡部愛女流三段(28、帯広市出身)が、初代タイトルの座に挑む。新設され、昨年11月から始まった女流順位戦のタイトル「ヒューリック杯白玲(はくれい)戦」で、11日からの7番勝負を西山朋佳女流3冠(26)と争う。賞金額は女流棋界最高額となる1500万円。18年女流王位に続くビッグタイトルを狙う。

19年の女流王位戦以来、約2年ぶりのタイトル戦を前に渡部は「始まる前は、ここまで残れると思っていませんでした」と驚きつつ「久しぶりのタイトル戦が、こうした女流棋界最高峰の一戦で、初代ということで注目もされると思うし、頑張りたいです」と意気込んだ。

新設された白玲戦は、男性棋戦の名人戦と同様に順位戦と呼ばれるリーグ戦を戦い、トップのA級で1位を取った棋士1人が、タイトルに挑戦できるシステムで行われる。初年度の今期は、1人ずつの順位付けをする戦いを実施。「女流も順位がつけられるということで、気を引き締めないといけないと思いました」。

渡部は予選E組を6勝1敗で1位通過。各組1位同士の挑戦者決定トーナメントに進出した。「負けた1局(4局目)は王様を逃がす時に、2択で詰む方に逃げてしまうという凡ミス。切り替えていこうと言い聞かせて何とか勝つことができました」。準決勝では里見香奈女流4冠(29)を下すなど強豪を連破し、タイトルを決める7番勝負進出を決めた。「1位通過で来期のA級入りが確定して、トーナメントは伸び伸び指すことができたのがよかった」と話した。

昨年からのコロナ禍で練習方法も対面での対局が減り、オンライン上の研究会が主流になっている。渡部は「モニター越しだと何か調子が出ないというか。その影響もあってか、昨年は成績(15勝16敗)も全然で。ようやくこの環境にも慣れて、今年はここまで順調に来ています」と手応えをつかんでいる。

初代タイトルを争うのは西山女流3冠。女流史上最強の呼び声も高い強敵とは、これまでは非公式戦で1度だけ対局がありその時は敗れた。「ぶつかっていく気持ちでやりたい」と意欲的に話していた。【小林憲治】

◆女流タイトル 白玲戦が加わり全8タイトルとなった。これまでは19年から始まった清麗戦の700万円が最高賞金だったが、白玲戦は1500万円と女流棋界最高峰となる。現タイトルは里見香奈女流4冠(清麗、女流名人、女流王位、倉敷藤花)と西山朋佳女流3冠(女王、女流王座、女流王将)が分け合っている。一般棋戦の最高賞金は竜王戦の4400万円。

◆渡部愛(わたなべ・まな)1993年(平5)6月26日生まれ。帯広市出身。北海高を卒業後に上京。13年女流3級でデビュー。18年に第29期女流王位戦でタイトル初挑戦し奪取。同年に女流タイトルホルダーとして出場した男性棋戦では4勝を挙げた。日本女子プロ将棋協会(LPSA)所属で女流三段。棋風は攻め将棋。趣味はコンサドーレ札幌観戦。好きなアニメは名探偵コナン。