2001年に起きた米同時多発テロから20年の節目となった11日、ドナルド・トランプ前大統領が救助活動に当たった米ニューヨーク市警察と消防署をサプライズ訪問した。この日は事件の現場となった世界貿易センタービルの跡地「グラウンド・ゼロ」など3カ所で追悼式が行われ、バイデン米大統領をはじめオバマ氏ら歴代大統領3人も参列したが、トランプ氏の姿はなかった。ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ氏はニューヨークで行われた追悼式への招待を受けていたが、欠席することを選択したと伝えている。

ニューヨーク出身のトランプ氏は個人で警察署と消防署を訪れ、警察官や消防隊員を激励。「さまざまな理由で、9.11はとても悲しい日だ」と語った後、アフガニスタンからの米軍撤退を巡って自爆テロで米兵に犠牲者が出たことを糾弾するなどバイデン大統領への批判を展開した。また、次期大統領選への出馬について問われると、「簡単な質問だ。どうするか(答えは)分かっているが、今はまだそれについては答えられない。でも、みんなが幸せになるはずだ」と語り、出馬をにおわせる発言をした。トランプ氏はこの訪問に先立って20年を記念して発表した動画声明でも、「勝利と名誉と力を示す年になるはずだった。バイデン氏と無能な政権は敗北し、降伏した。この無能が引き起こした汚点から立ち直るのに我々は苦労することでしょう」と最大の失策だとバイデン政権を批判していた。

そんなトランプ氏は同日夜には、フロリダ州ハリウッドで開催されたボクシングの元ヘビー級王者イベンダー・ホリフィールド対UFC元ライトヘビー級王者ビクトー・ベウフォート戦で長男トランプ・ジュニア氏と共にコメンテーターを務めた。試合はホリフィールドが1回TKO負けとなり、10年ぶりの復帰戦を飾ることができなかったが、レフェリーに試合を止められたホリフィールドがこの判定に納得がいかず抗議する様子を見せると、トランプ氏は「過去にも悪いボクシングの判定を多く見てきた。まるで選挙のようだ。不正である可能性がある」とコメント。自身の選挙結果とホリフィールドの負けを重ね合わせるなど、ここでもトランプ節をさく裂させていた。

ネットではトランプ氏が追悼式典に出席しなかったことについて、「マスクを着用するのが嫌だったから」「自分が主役ではないからだ」「静かに黙って追悼することができないから」などと辛辣なコメントが寄せられている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)