東京・池袋の都道で19年に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡し、9人が重軽傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪に問われ、禁錮5年(求刑禁錮7年)の実刑判決を受けた、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(90)が、16日の控訴期限までに控訴せず、実刑が確定した。

遺族の松永拓也さん(35)が17日、都内で会見し、飯塚被告が「遺族に対して申し訳ない。判決を受け入れたい」と周囲に話しながらも、いまだ遺族への直接謝罪がないことを明らかにした。「謝罪するなら面と向かってしてほしい。『自分の過失だと思う』という言葉を聞けていない。過失を認めないで刑務所に入って贖罪(しょくざい)と言えるのか」と疑問を呈した。

19年4月19日の事故発生から2年5カ月、飯塚被告に妻子の命と罪と向き合ってほしいと一貫して訴えてきた。「裁判長から『裁判に納得がいったなら罪を認めた上で遺族、被害者に謝って下さい』と言われ、うなずいたじゃないですか? でも向き合っていると、どうしても思えない。控訴断念に至った本当の思いを聞きたい」と首をかしげた。

松永さんは涙ながらに「心から愛してるよ。1つでも交通事故を減らしたよと伝えたい」と妻子に誓った。「誰もが加害者にも被害者にも遺族にもなり得る。そうなってほしくない。どうすれば事故がなくせるかが本質的に大事で、それが真菜と莉子の命を無駄にしないこと」と、交通事故撲滅に人生をかけて臨む考えを強調した。【村上幸将】