菅義偉首相の後継を決める自民党総裁選に向け、公開討論会(党青年局、女性局主催)が20日、開催された。高市早苗前総務相は、北朝鮮による拉致問題で「(北朝鮮に)乗り込んででも、しっかりと話して来る」と強い姿勢を示した。党役員の任期や比例名簿の定年制については明確さを欠いたが、拉致問題や憲法改正では他の3候補との明確な違いをアピールした。

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拉致問題に関して高市氏の存在感が際立った。「最重要課題の1つ。ご家族の高齢化を考えますと、もはや一刻の猶予もない」とした上で「あらゆるルートを模索しながら(金正恩氏と)1対1の対談の場を作りたい。何としても、(北朝鮮に)乗り込んでも」と、強硬姿勢だ。さらに「NHKは受信料でなり立っている。国際放送には税金が投入されている。もっともっと、拉致の問題を発信して」と注文をつけた。

この日、高市氏と岸田文雄前政調会長は左胸に議員バッジと、拉致被害者の救出を願うブルーリボンバッジを着用した。野田聖子幹事長代行は議員バッジのみ。河野太郎行革相は両方ともに未着用だった。拉致問題について野田氏は「安倍、菅政権の重要な問題解決の1つだったが、何か前進したか。私は何も聞いていません」と批判したが、河野氏は「米中韓ロシアと意見交換して土壌を作っていく」などと、かなりの温度差を感じさせた。

憲法改正に関しても高市氏は「今の憲法は、技術革新、安全保障環境、社会の変化に追い付いていない」などと、ブレない主張を繰り返した。また、討論会後には台湾の蔡英文総統とオンライン会談し、東アジアの安全保障などについて意見交換した。河野氏は「国会でしっかりと議論して、だいたい合意に至るよね、というところから順番に国民投票にかけていく。情報発信をていねいにやっていく」とするにとどめた。

しかし、衆議院比例代表73歳定年制、若手登用に関しては、「自民党の強みは若い世代からシニアの世代まで幅広い年齢層が活躍していて、全世代の安心感を創出するという意味では何歳にするかというのは慎重に」と、支持を受ける党の重鎮への忖度(そんたく)を伺わせた。

岸田氏は公約に打ち出した党役員の任期制限「総裁を除く党役員は1期1年、連続3期まで」を重ねて強調するなど、長老支配からの脱却や若手、女性登用を訴えるなど、党改革への姿勢を貫いた。

討論会はユーチューブでもライブ配信された。チャットには高市氏を評価するものが多く、逆に河野氏に対する批判が多い印象だった。安全保障などの強硬論への賛否は別にして、高市氏のブレない姿勢は他候補と一線を画し、日増しに注目度をアップさせている。【大上悟】