自民党の岸田文雄総裁が4日、衆参両院本会議の首相指名選挙で選出され、第100代首相に就任した。新内閣は全閣僚20人のうち、初入閣13人となったが、総裁選の「お礼人事」が色濃く、女性もわずか3人と少なく、新鮮味には欠ける。新型コロナウイルス対策を担当する厚労相ら3閣僚の留任はなく、いずれも初入閣組で占められ、継続性などが懸念される。次期衆院選は19日公示、31日投開票の最速パターンとする意向も固めた。

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全閣僚20人中、半数以上が初入閣したが、岸田首相を含めた平均年齢61・8歳で菅義偉政権が発足した時の60・4歳を上回り、新鮮味を感じさせない顔ぶれで論功行賞が目立つ。

野田聖子地方創生、こども政策相は創設される「こども庁」を兼任する予定で、野田氏の公約に沿った役職となった。総裁選は野田氏の初出馬で4氏乱立による票の分散化で岸田氏を決選投票の勝利に導く、重要な役割を担った。「3候補を登用する」とした岸田氏だが、閣僚は無派閥の野田氏だけ。野田氏は「役所(入閣)は(小渕内閣で37歳で郵政相に抜てきされて以来)2度目」と意欲を示した。

総裁選で岸田氏勝利に尽力した派閥の意向が、そっくり反映されている。二之湯智国家公安委員長(77)は、来夏の参院選には不出馬で今季限りの政界引退する意向を示している。総裁選の最終盤で岸田支持を表明した旧竹下派にお礼の「惜別人事」とみられ、不可解さはぬぐえない。

一般的に継続性や一貫性が求められる外交・安全保障分野の茂木敏充外相と岸信夫防衛相は留任。しかし、新型コロナウイルス対策を担当する厚労相、ワクチン相、経済再生相の3閣僚は、いずれも初入閣組で占められ、引き続き重要課題であるコロナ対策の継続性や実務面で不安も残る。

一方で、次期衆院選の日程は19日公示、31日投開票の方針を固める早業だ。衆院議員は21日が任期満了で、これまで26日公示~11月7日投開票や、11月2日公示~14日投開票の11月決戦が有力視されていた。新政権誕生による浮揚ムードが冷めないうちに選挙戦を走りきる目算か「ご祝儀ムードの賞味期限が切れる前に、だね」と、自民党ベテラン閣僚経験者は最速シナリオの総選挙突入に、したり顔を浮かべた。【大上悟】