今年は、NFTというキーワードが注目を集めました。弊紙はスポーツ新聞なので、NBAとかNFLなどはよく出てきますが、NFTってなんだ? という方も多いはず。NFTとはNon Fungible Tokenの略で、日本語だと非代替性トークン。ますますわかりませんよね。とはいえ、日本の芸能界では先月、香取慎吾(44)がNFTを使ったアートチャリティープロジェクトを成功させました。ということで、担当者にNFTをわかりやすく解説してもらいました。
<プロジェクトをサポートした金澤賢一氏に聞く>
IT業界を中心に、今年はNFTが沸騰ワードになっている。ツイッター創業者の最初の投稿が3億円超で落札されたり、日本の小学3年生のデジタルアートが数十万円で売れたりするなど、NFTはさまざまなニュースとなった。個人的には、仮想通貨と同じようなもので、バブルなんだろうと思っていたが、芸能界でもNFTという言葉が飛び交うようになった。
香取は今年9月、「NFTアートチャリティプロジェクト」を行った。これは、15年に「i enjoy」をテーマに描いた縦2・6メートル×横6・1メートルの壁画を、NFTアートにするという試み。照明など、最高のセッティングで、この壁画を撮影しアナログの壁画をデジタルデータ化。これがNFTアートとなり、たった1日で、1万人に売れた。これはアート業界では異例のことだったらしい。
今回のプロジェクトをサポートしたのは、香取ら新しい地図がレギュラー番組をもつ、番組配信サイトABEMAを運営するサイバーエージェントが昨年4月に立ち上げた株式会社OEN。エンタメ産業におけるデジタル収益化を支援する会社だ。ABEMAのオンライン事業本部局長も兼務する金澤賢一氏(33)に、小学生でもわかるようにNFTを解説してもらった。
-NFTってこれから重要なのですか
金澤氏 OENはエンタメをどうマネタイズしていくかを支援する会社で、今は、オンラインライブなどに力を入れています。NFTはエンタメをDX化していく中で、とても重要視しています。
-NFTを購入するには仮想通貨を用意しないとだめなんですよね
金澤氏 そうなんです。香取さんのファンにいきなり仮想通貨を用意してもらうのもハードルが高い。ということで、事務所からチャリティーにしませんかという提案をいただき、今回は通常とは違うスキームにしました。NFTでのビジネスより、市場を作り、一般化させて、みなさんに知ってもらい、まずは手にとってもらうことを目指しました。
今回の香取のスキームを説明する前に、一般的なNFTの作り方を説明する。<1>まずはアートや画像などNFT化するデータを決定する。<2>暗号資産のイーサリアム系のウォレットを用意し、イーサリアムを購入し、ウォレットで保管する。<3>ウォレットと、NFTを販売するECサイトのようなNFTマーケットプレイスを接続する。<4>NFTマーケットプレイスにNFT化したいデジタルデータをアップロードし、オークション期間、最低落札額、ロイヤルティーなどを設定する。<5>これでミンティングが可能に。ミンティングとは、自分のアイテムを不変で改ざん不可能なパブリックブロックチェーンの一部にするためのプロセス。手数料として再びイーサリアムが必要だ。
-仮想通貨を知らない人にはハードルが高いです
金澤氏 そうなんです。今回は、まず、新しい地図のECサイトで、クレジットカード決済で購入してもらいました。多くの方が使っているLINEを利用し、LINEのIDを聞き、購入者はLINE BITMAX Walletから香取さんのNFTアートを入手してもらいました。
-クレカ使用は安心感がありますね
金澤氏 NFTに詳しい人からは、これをNFTと言っていいのと言う方もいるかもしれません。今回の目的の1つは、NFTの一般化です。ただ、購入されたアートはトークンが組み込まれてますし、いわゆるデジタルの鑑定書で証明されてますし、当人しかアートを引き出すことはできません。
-チャリティーなので、利益は?
金澤氏 本来でしたら、NFTを販売するマーケットプレイスも、NFTを管理するウォレットもそれぞれ手数料を取ります。今回はチャリティーなので、壁画をデジタル化した費用とか、LINE BITMAX Walletも手数料も取らず、クレカ決済の手数料は所属事務所が負担しました。なので、1万人に購入していただいた3900円は、すべて寄付させていただきました。
-反響はいかがでした
金澤氏 パラリンピック、香取慎吾、NFTというワードが世に出たので成功したと思っています。購入者の中には、娘や息子もよく知らないNFTアートをもっているという満足感をもたれた方もいたようです。
-エンタメ界はNFTをどのように使えばいいのでしょう
金澤氏 NBAは選手のダンクシュートなどの動画や写真をNFT加工したトレカがヒットしています。例えば、過去のヒットドラマのワンシーンをNFTで販売することも可能で、「冬のソナタ」での、あの時のヨン様というのはどうでしょう。1点ものでも、1万点でもできます。あとは、スニーカーのNFTを購入し、履きたい時は実物と交換できるという商品もあります。
-NFTは付加機能もつけられるそうですね
金澤氏 プログラマビリティと呼ばれ、好例なのが、転売した際に、手数料を徴収することも可能です。例えば、香取さんが1点もののアートを販売し、それを購入した画廊が客に売った時にも、香取さんに手数料が入るプログラムを仕込むこともできます。古書店で販売されているコミックの売り上げが、作者にも還元されるというイメージです。
-クリエイターにはいいですね
金澤氏 画家は絵を売って生計を立てますが、その絵はコピーされたり、にせものが出たり、画家よりももうける人がいる。クリエーターやアーティストを守らないと、新たな作品が生まれません。NFTならコピーも不可能だし、2次、3次流通でもお金が入る仕組みで、クリエーターを保護すると思います。
-映像も音楽もコピーとのいたちごっこです
金澤氏 個人的には世の中のデータがNFT化されていけば、海賊版の概念がなくなると思います。コミックもNFTで販売すれば、漫画村のような違法コピーもなくなると考えています。
◆NFT Non Fungible Tokenの略。直訳は非代替性トークン。ビットコインなどの仮想通貨はFT(Fungible Token)に分類される。トークンとは、代用貨幣、引換券などの意味をもち、アナログなら、ゲームセンターでのコインや、遊園地での金券などを指す。ただ、NFTや仮想通貨でのトークンとは、ブロックチェーン技術を使って発行された電子的な証票を意味する。非代替性とは代替が不可能という意味。1万円札は1万円札や1000円札10枚と、1ビットコインは1ビットコインといつでも交換できる。だが、日付、座席指定のコンサートのチケットなどは同じものがなく、非代替性とされる。さらに、1万円札でも、印刷ミスとかぞろ目の番号など、コレクターにとって価値が出るものもあり、このレア情報を踏まえた1万円札は非代替性なアイテムとなる。
◆竹村章(たけむら・あきら)1987年(昭62)入社。販売局、編集局地方部などを経て文化社会部。芸能全般のほか、放送局などメディア関連の担当が長い。テレビの特集ページ「TV LIFE」を立ち上げたほか、現在も続く「ドラマグランプリ」の開設にかかわった。エンタメ界ではアナログ時代から、貸しレコード店をはじめ、コピーとの戦いだった。チケット転売も含め、アーティスト側に正しい売り上げが入れば、商品の値段も下がり双方がウィンウィンになると思う。

