千葉県銚子市で、風力発電などを利用して電力供給する「銚子電力」が、契約者の使用料金の1%を五輪出場を目指す地元選手の活動費にする画期的なプランを今月6日から導入した。

現在の支援対象は競泳のホープ3人。同9日に日本学生選手権の女子100メートルバタフライで池江璃花子(21)に競り勝ち初優勝を果たした飯塚千遥(20)も支援を受ける選手のひとりだ。企画導入の背景には同市出身のオリンピアンの尽力があった。

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電気料金を使って銚子市出身のスポーツ選手を支援する。このプランの提唱者は、2016年リオ五輪に女子トライアスロンで出場を果たした加藤友里恵さん(34)。銚子市が輩出した五輪出場者は1964年東京大会で陸上1500メートルに出場した山口東一さん(79)以来だった。

加藤さんは昨年11月に競技を引退。陸上長距離から念願だったトライアスロンに13年から転向した。加藤さんは「私は友人に恵まれて後援会もつくってもらい、なんとか五輪予選に出場して奇跡的にリオに行けた」とし、「誰にでもチャンスはある。正直な話、海外での選考会に出場することを考えると、五輪に出るための活動資金を捻出するのは本当に大変なんです」と実体験から振り返った。

同市報に加藤さんの苦労話が掲載されたことがきっかけで、銚子電力の伊東孝之社長(35)が反応した。銚子電力は18年6月の設立ながら、経営難の銚子電鉄への支援プランなども打ち出し、昨年10月からの1年で契約者数も「具体数は言えませんが倍増した」(伊東社長)という。

さっそく加藤さんと面会してプランを検討。伊東社長は「銚子の選手に“調子よくなる料金プラン”というダジャレのような企画になった」と説明。6日から「銚子アスリートプラン」として商品化した。

一部離島以外は日本全国どこに住んでいても銚子電力と契約可能だ。契約すると、支援する選手からメールなどで現況リポートも配信される特典もつく。このプランで支援するのは銚子市出身の競泳3選手。パリ五輪の有望候補として期待される飯塚の他には銚子商2年砂村明彦、光彦の双子の自由形スイマーもいる。

加藤さんは「注目されていなかった私も五輪に出場できた。砂村兄弟も急激に力をつける可能性はある。普通に生活して電気料金を支払うだけで若い選手の成長を見守ることができる」と話す。銚子電力は今後、市内で廃校となった校舎をリフォームして選手の活動拠点を築くことも計画しているという。【寺沢卓】