衆院選は30日、選挙戦最終日を迎え、与野党幹部が激戦区を中心に街頭演説を行った。

岸田文雄首相は埼玉、東京、神奈川の首都圏9カ所を駆けめぐり、締めくくりのマイク納めは東京・品川区のJR大井町駅前で行い、国政選挙の締めを東京・秋葉原で行ってきた安倍晋三元首相とカラーの違いを明確にした。各野党の党首も、最後の演説に全精力を傾け、選挙戦を締めくくった。

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岸田首相が「脱安倍」のマイクパフォーマンスを締めくくった。2012年の衆院選で政権に返り咲いて以来、安倍晋三元首相は東京・秋葉原で国政選挙の最終日に演説を行うことを定番としてきた。だが、岸田氏はサブカルチャーの聖地での熱狂や、時に1万人以上が集結する「祭り」よりも、激戦区のテコ入れに最後の最後まで奔走した。

首都圏9カ所の激戦区を駆け抜け、名より実を取るマイク納めの地は激戦の東京3区が選ばれた。土曜日夕方のJR大井町駅前は数百人の聴衆で埋まった。岸田氏は「いよいよ大詰めの時、マイク納め直前の大切な時、大激戦が続いている東京3区、石原宏高、何としてもみなさま方にお願いしておこうと駆けつけさせていただきました」と最後の支持を訴えた。

岸田氏は9月の総裁選で3A(安倍氏、麻生太郎副総裁、甘利明幹事長)と呼ばれる新たな自民党主軸の思惑と支援を受け、首相の座を手中にした。組閣人事でも3Aの影響力は色濃かったが、「この岸田に任せていただけるかを問う」とした初陣の締めは岸田流を貫いた。

今回は野党共闘によって全国289の小選挙区中、217選挙区で候補者が一本化された。終盤に自民党が独自調査した情勢分析で選対本部に緊張感を漂わせた1つが東京3区だった。同区は野党共闘が成立せず、自民党の石原氏、立憲民主党の松原仁氏が競り合い、共産党新人の香西克介氏が2人の前職を追う展開だ。

03年の衆院選の初対決から石原氏と松原氏は6回連続で激戦を展開している。石原氏が3連勝中だが、14年は約4200票差、12年は約2000票の大接戦だった。その石原氏は終盤の情勢で松原氏に逆転を許していると伝えられている。兄で東京8区の石原伸晃元幹事長も接戦だけに、兄弟そろっての落選となれば、激震は必至だ。岸田氏にとって衆院選初陣の焦点は定数465議席のうち、自民党で単独過半数の233議席の獲得なるか。きょう31日、審判の時を迎える。【大上悟】