京大は8日、山中伸弥教授(59)が22年3月31日の任期終了をもって、iPS細胞研究所(CiRA)所長を退任すると発表した。次期所長には、2日に開催された教授会で、CiRAの所長候補者選考内規に従って投票が行われた結果、高橋淳統括副所長・教授(臨床応用研究部門)が過半数の票を得て選出されたことも、併せて発表した。次期所長の任期は、22年4月1日から24年3月31日までとなる。

山中教授は10年の研究所設立当初より6期(12年)にわたり所長を務めてきた。所長退任後も京大に在籍しCiRA教授・主任研究者として引き続きiPS細胞研究を推進していくとした。同教授はiPS細胞研究所公式サイトで「2006年にiPS細胞を発表して以来、15年間にわたり組織運営や寄付募集活動に微力を尽くしてまいりました。この数年は、研究者としての最後の期間は自身の研究に注力したいという思いが日に日に強くなっていました」と思いをつづった。

その上で「先日の教授会で令和4年度からの所長として高橋淳先生を推薦し、投票の結果、高橋先生が選出されました。iPS細胞を用いた多くのプロジェクトが臨床試験の段階に到達しつつある中、自らも臨床試験を先導されている高橋先生は、新所長として最適の研究者です。私は、基礎研究者として、iPS細胞や医学・生物学の発展に貢献できるよう全力を尽くします」とコメントした。

高橋次期所長も公式サイトでコメントを発表し「iPS細胞研究所所長を山中伸弥所長から引き継ぐことになり、身のひきしまる思いです。研究所を立ち上げ軌道に乗せてこられた山中所長の長年のご努力に心から敬意を表します」と山中教授に感謝した。その上で「『iPS細胞』という言葉は、単に細胞そのものを指すだけではなく、iPS細胞技術やリプログラミング(初期化)の概念を含みます。その技術や概念を用い、また他の技術も巻き込みながら、未来の医療や生命科学に貢献できるようCiRA教職員・学生とともに研究・医療応用を推進します」