日本人帰国時の「水際対策」による検疫強化で、入国時の“大渋滞”が課題となっている。「オミクロン株」の感染拡大を防ぐため、滞在していた国・地域によって、10日間、6日間、3日間の3段階で国が指定する宿泊施設での待機措置を実施。厚労省は「到着から入国まで数時間程度、待機していただく状況」と公表している。だが、実際は6時間以上を要する場合も多く、対象者の体調管理なども懸念材料だ。

午後5時半ごろに米国から帰国し、入国が約8時間後の翌午前1時半ころとなった40代男性が電話取材に応じた。「待合場所で一番時間がかかったのは、隔離する宿泊施設への調整に戸惑っていたこと。テレビのある、なしなどの希望も聞かれましたが、場所に関しては仙台とか沖縄とかも含めた可能性があると聞いた」。空港や自宅周辺だけでなく、東北から九州まで候補先があり、行き先も移動のバスに乗るまで伝えられない不安な時間が続いたと言う。「事前に候補地がいくつか提示されて希望を出す形などがあれば、もう少し時間が短縮出来ると思う」と今後の改善を願った。

厚労省の担当者は14日、「日々、指定国が追加になっていて、対象者が多くなっている。宿泊先も成田や羽田から名古屋までチャーター便で往復していただくこともあった」と現状を説明。すでに全国で1万3000室を確保しているが、今後も帰国者は増加傾向だと言う。部屋数確保に尽力するほか、長時間に至った場合は軽食や飲料の提供で対応する意向だ。

宿泊先では外出だけでなく、飲酒や喫煙も不可。弁当が3食届けられ、飲料に関してはフロントなどで追加を要請出来る。入国時にはコロナの抗体検査のほか、出国前の陰性証明書や滞在歴や健康状態を記入した質問票の提出、スマホへの入国者健康居場所確認アプリなど3種のインストールや設定など、数多くの作業も必要。空港検疫は一定の成果が出ているが、課題も散見だ。【鎌田直秀】

 ◆指定宿泊施設での待機対象国・地域(14日現在) オミクロン株の感染拡大状況によって設定されており、最大10日間は南アフリカ、ナミビア、ボツワナなどアフリカ11カ国。6日間は英国、イタリア、韓国など10カ国。3日間はフランス、オーストラリア(首都特別地域)、米国(ニューヨーク州など)、香港など21カ国。宿泊先の3日目、6日目、10日目に抗体検査を行う。陰性なら待機期間終了後、自宅やホテルでの14日間待機措置(宿泊待機含む)に移行する。