長引く新型コロナ禍の閉そく感も手伝ってか、2021年は身も心も解きほぐしてくれるサウナが、空前のブームに。

「2021ユーキャン新語・流行語大賞」で、サウナ用語の「ととのう」がノミネートされるなど、社会現象となった。著名人や経営者など1000人以上を「ととのう」状態に導き、サウナブームの火付け役となったプロサウナー「ととのえ親方」こと松尾大さん(45)に話を聞いた。【取材・構成=沢田直人】

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-「ととのう」とはどういった状態を表すのですか

親方 「サウナ、水風呂、休憩」を繰り返すことで得られる「多幸感」。脳と体、心がリラックスしている状態を言いますね。

-水風呂の後の「休憩」は前からありましたか

親方 今まではサウナと水風呂を行ったり来たりしていた人が多かったです。休憩というものが出てきたことによってサウナブームができた。ここ2、3年でいろんな人が「サウナ、水風呂、休憩」が良いと言い始めた。正しい入り方が分かり、サウナが心地よいと伝わったのだと思います。

-時間配分などサウナの入り方を教えてくれますか

親方 僕は時計は見ないで、出たくなったら出る。(割合でいうと)サウナ4:水風呂1:休憩5くらいで考えています。サウナの後の水風呂が嫌いな人がいると思う。15~30秒ぐらいつかると、「水風呂の向こう側」(サウナ愛好家がよく使うフレーズ)があります。そこの「ととのい」を体験してもらいたい。

-ブームをどのように感じていますか

親方 僕はすごくうれしい。このために5年間ぐらいやってきたから。もともと「サウナー」とか「ととのう」っていう言葉は漫画「サ道」(タナカカツキ氏原作)でありました。ただ、サウナはおじさんのものというイメージ。だから僕らは若い人向けにファッションと結び付けました。女性誌とかYouTuberと組んで、20代にも届くようになりました。

-そもそもサウナにはまったきっかけは

親方 昔からサウナが好きで、世界のサウナに興味がありました。40カ国以上の国でサウナを探す旅をしました。12年ほど前に、アメリカのアリゾナの山奥で、5日間の断食断水後のサウナを経験しました。6キロぐらい体重が減って汗も出なかったです。そこで(熱した石に水を掛けて蒸気を発生させる)ロウリュをすると植物みたいに肌から水分を吸うんです。そういう経験をいろんな場所で話して、たくさんの人を札幌のサウナに案内してたら、いつのまにか「ととのえ親方」と呼ばれるようになりました。

-コロナ禍でサウナはどのように変わりましたか

親方 黙浴と言われるようになりましたよね。感染症対策だからしょうがないけど、僕はあんまり好きじゃない。(新型コロナ禍では)家からも出られないし、どこにも怒りとかぶつけられないでしょ。お風呂とかサウナはリラックスする場だと思う。早くサウナでお話しできる時代に戻って欲しいと思います。

-サウナをどのように発展させていきたいですか

親方 僕はウォシュレット(温水洗浄便座)やシャワーのようにしていきたい。この2つは昔はなくて、ユニットバスみたいに家庭に取り付けられるようにしていきたいですよね。

-「プロサウナー」とは

親方 サウナーはサウナで汗を流す人。プロサウナーはサウナのために汗を流す人。沢田君もプロサウナーだね。

-「ととのえ親方」のように異名をもらえるように頑張ります

親方 「新聞記者サウナダ」とか良いと思うよ(笑い)。

 

◆松尾大(まつお・だい)1976年(昭51)7月30日、札幌市生まれ。サウナのプロデュースをするほか、福祉施設やフィットネスクラブを経営する実業家。17年にプロサウナーの専門ブランド「TTNE PRO SAUNNER」を立ち上げた。19年に友人の医師らとサウナの最適な入り方を提唱する「日本サウナ学会」を設立。20年にはサウナの指南書「Sauunner BooK(サウナー・ブック)」(A-Works)を著作。サウナには週に14回ほど入る。