東京・築地(中央区)の築地波除(なみよけ)神社は、新型コロナウイルス対策を張り巡らせて2022年寅年の初詣に臨む。

収束すると思われたコロナの猛威も、オミクロン株の発生で再び感染拡大する傾向にある。初詣のコロナ対策について、感染症の気配がまったくなかった2018年の参拝者数トップ10の寺院神社にも聞いた。

◇  ◇  ◇

築地場外の片隅で約40坪の敷地に立つ波除神社は正月三が日だけで約3万人が訪れる。コロナ対策としては、本殿にマットを敷いて靴を脱がずにそのまま上がれるようにした。4年前からマットを敷くようになり、靴を脱いでいたときには革靴を履き間違えることがあったり、参拝者の入れ替えで時間がかかっていたが、マットを敷いたことで密にならずにスムーズに入れ替えができるようになった。

また、本殿での祈祷 (きとう)に関しては1グループを10人までに制限し、最多で1度に6グループまでに入場制限をすることに決めた。

消毒液の後方にはミニチュアの鳥居を設置して「単なる手指消毒ではなく、ささいなことではありますが神社であることを意識してみました」と波除神社祢宜(ねぎ)の鈴木淑人さんは説明した。

2021年は巣ごもりライフが通常化したこともあり、波除神社には近隣の住民が多く訪れるようになったという。「歩いて行ける範囲というのがポイントのようです。今まで見たことのない方々が多く訪れた。聞くとごくごく近所。離れた場所の大きな寺社よりも、すぐ近所での参拝というコロナ時代のご縁が見えたような気がします」(鈴木さん)。【寺沢卓】

◆築地波除神社(つきじなみよけじんじゃ) 1659年(万治2)建立。明暦の大火(1657年)後、4代将軍家綱公が江戸湾で手がけた最後の浅瀬の埋め立ての工事が困難を極め、堤防を築いても大きな波に破壊されていた。工事中の夜、海面で光りを放ち漂う物体を引き寄せると御神体だった。その場所に社殿を作ってまつると波風が収まり、埋め立て工事が完了し、社殿を波除神社と命名した。雲を従える龍、風を操る虎、そしてその龍虎を一声で威伏させる獅子の巨大な頭を奉納したことから祭礼「つきじ獅子祭」が発祥した。境内には重さ1トンの「厄除天井大獅子」と同700キロの「お歯黒獅子」が祭られており、6月の祭礼時には獅子をみこしのようにして担ぐ風習がある。

(1)明治神宮(東京・渋谷区) 約316万人(18年・正月三が日の参拝者数。以下も同様)

参拝者が並ぶ動線となる地面にチューブを埋め込んで待機するポイントをつくり、列内での人と人の距離を保つようにした。参拝後に本殿から札などを購入する社務所を21年正月よりも距離を離して、密にならないようにした。

(2)川崎大社平間寺(神奈川・川崎市) 約302万人

大本堂に空気清浄器を設置して室内の空気を常に入れ替えられるようにした。大本堂の周辺のおみくじ場を各所に点在させて密にならないようなレイアウトにした。

(3)成田山新勝寺(千葉・成田市) 約300万人

21年正月は本堂への入場はできないようにしていたが、22年は人数制限して混雑の様子をみながら入場をすることにした。

(4)浅草寺(東京・台東区) 約283万人

例年通り、地元浅草警察署と連携して参道となる雷門から仲見世商店街を途中から入場できない警備体制を敷く。アルコール消毒液のポンプは「いたるところに設置した」(浅草寺広報担当)。21年正月は雷門にサーモグラフィーの検温システムを導入したが、参拝者を一時歩行停止状態にさせるため「逆に密になっていた」(同)ため検温の定点観測は廃止した。

(5)伏見稲荷大社(京都市) 約270万人

21年正月に参道における露店設置はすべて廃止したが、22年は参道の南側だけ露店営業をできるようにした。20年は、参道の南側と北側を露店スペースとしており、参道の露店営業は2年ぶりに50%復活する。

(6)鶴岡八幡宮(神奈川・鎌倉市) 約250万人

11月26日からインターネットで巣ごもりライフをする人や遠方在住者に向けて、新年祈祷やお正月の縁起物の絵馬付き破魔矢のオンライン受付所を開設した。コロナ対策の注意喚起として鎌倉駅近くの参道のこま犬2体にマスクを装着させた。

(7)住吉大社(大阪市) 約236万人

12月1日から22年3月31日までを「ゆったりもうで」と分散参拝のキャンペーンを初めて実施した。密をさけて、余裕をもって参拝するという試み。「来年は寅年、阪神タイガースのファンにとってはうるわしい年でもあるので、21年のうちからえとの寅年に関連した破魔矢やお札を購入される方も多かった」(住吉大社総務部広報担当)。

(8)熱田神宮(愛知・名古屋市) 約230万人

21年正月から参拝者の混み具合が一目瞭然で分かるように大宮大前にライブカメラを設置してホームページ(HP)から見られるようにした。21年12月から正参道、東参道、上知我麻神社の3カ所を新設し4カ所の定点ライブ画像がHPから見られるようになった。「まずはHPで現状を把握されてからお越しください」(熱田神宮総務部)。

(9)武蔵一宮氷川神社(さいたま市) 約215万人

分散参拝に関して21年11月末から呼びかけてきた。「その効果なのか、12月にいち早くお参りをすまされる方々は増えた」(武蔵一宮氷川神社広報担当)。21年正月に引き続き、露天の飲食関連の出店は自粛した。

(10)太宰府天満宮(福岡・太宰府市) 約200万人

参道も含んでサーモグラフィーの検温システムは21年正月の8基から2基増の10基となった。お札やお守りやおつりなどは直接手渡しはせずに四角いお盆状の「折敷(おしき)」に乗せて授与する。