17日召集の通常国会では、昨年末の臨時国会で法改正が先送りになった「文書通信交通滞在費(文通費)」の行方が焦点の1つです。国会議員に給与にあたる歳費とは別に、毎月100万円の経費が在籍1日でも満額支給され、領収書提出や使途報告、未使用分返納などの義務がないため、税金なのにブラックボックス化。“第2の給与”とも呼ばれ問題視されながら、長く放置されてきました。昨秋の衆院選をきっかけに再び見直しの声が高まる中、文通費だけでなく、国会議員がどんな待遇を受けているのか、調べてみました。

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欧米主要国の国会議員はどんな待遇なのでしょうか?      

【米国】 下院は435人、上院は100人。議員歳費は両院とも1人年17万4000ドル(約1914万円)。下院議員には、議員代表職務手当が支給。秘書雇用手当、事務所費用手当、公務用郵送手当が統合されたもので、秘書給与もここから支給し、旅費、通信費、選挙区の事務所賃料、備品購入などにも充てることができます。金額は年138万2835ドル~156万796ドル(約1億5211万1850円~1億7168万7560円、首都と選挙区の距離などによって異なる)。下院議員1人が雇用できる秘書の上限は22人。議員1人当たりの平均は約16・6人(19年時点)。

上院議員には、秘書・事務所費用会計があります。秘書給与、旅費、通信費、備品購入などに充てることができます。金額は年354万8352ドル~558万8426ドル(約3億9031万8720円~6億1472万6860円、選出州の人口、首都と選出州の距離などによって異なる)。上院議員1人が雇用できる秘書の人数は制限がなく、議員1人当たりの平均は約41・2人(19年)。両院とも、秘書は公務員。

【英国】 下院は650人、上院は792人。

下院は、09年に発覚した経費の不正請求スキャンダルにより、議員の歳費や手当について、独立機関の独立議会倫理基準委員会(IPSA)を設置し、事務を行わせることにしました。手当の不正請求などを行った議員のリコール制度も導入。手当の支出は議員活動に限定され、それ以外の政党活動、選挙運動などに支出することはできません。手当は原則、経費の支出をした議員や代理人からの償還請求に応じて支払われ、公表されます。

下院議員1人の歳費は年8万1932ポンド(約1228万9800円)。下院議員の手当は主に、住居手当、事務所費用手当、秘書雇用手当などがあり、選出地域によって金額が異なります。ロンドン地域外の選出議員の場合は以下の通り。住居手当は、ロンドン地域に住居を貸借する場合、年2万3010ポンド以内(約345万1500円以内)。事務所費用手当は、年2万5910ポンド以内(約388万6500円以内)。秘書雇用手当は年17万7550ポンド以内(約2663万2500円以内)。秘書の人数に制限はなく、議員1人当たりの平均は約4・9人(18~19年)。公務員ではない。

上院は任命制の一代貴族を中心とする議員で構成され、歳費や下院のような手当は原則支給されていません。

【ドイツ】 下院に相当する連邦議会709人、上院に相当する連邦参議院69人。

連邦議会の議員1人当たりの歳費は、年12万1001・64ユーロ(約1573万213円)。職務手当(選挙区事務所の賃貸費、光熱水費、備品、書籍、通信費、交通費などに充てる)が年5万4727・08ユーロ(約711万4520円)。事務所手当(議員が購入を決定した通信機器、専門書、文具などに充てられる。現物支給される)が年1万2000ユーロ(約156万円)。秘書雇用手当は年26万9232ユーロ(約3500万160円)。雇用できる秘書の人数には制限はなく、議員1人当たり平均約7・3人。ほかに鉄道の無料乗車券、国内線航空券など。

連邦参議院は、歳費や秘書雇用手当は支給されていない。

(国立国会図書館 調査及び立法考査局の資料、「イギリス下院の議員の歳費及び手当に関連する制度」、「欧米主要国の議員秘書制度 第3版」、衆議院調査局「選挙制度関係資料集」などによる)

(※原則、21年1月現在)