「ガンダムの聖地」がフィナーレを迎えた。ガンダムファンのためのエンターテインメント施設「GUNDAM Cafe(ガンダムカフェ)」が30日、秋葉原店、お台場店などで閉店。秋葉原店では午後9時の閉店後も別れを惜しむ300人超のファンが店の前に残った。カフェのスタッフもガンダム劇中に模した接客衣装のまま整列。敬礼ポーズをとって、「有り難うございました」と応えた。同9時半にはシャッターが閉められ、感動の涙を流すファンもいた。

予約制のレストランエリアは“ラストディナー”まで終日満席だった。推しキャラクターの機動戦士ガンダムSEED(シード)主人公「キラ・ヤマト」グッズで身を包んだ20代女性は福島・須賀川市から来場。「カフェ内ではキラに包まれた空間を満喫しました」と笑顔。キラの声優を務める保志総一朗が福島県会津若松市出身という縁もあり、幼稚園時代から両親の影響でガンダムに魅了され続けていると言う。「大人になってからはカフェを通じて知り合った友人とイベントに参加するのが楽しみだった。またいつか、ファンの集える場所が出来てほしい」と願った。

都内在住の20代女性は同じSEEDの「アスラン・ザラ」がイチ推しで「こんなに顔面偏差値の高いアニメがあるんだと知り、ガンダムが好きになりました」。10年4月に開店し、20年7月にリニューアルした“聖地”に「数多くあるアニメの中で、常設カフェで10年間も愛されたのはガンダムだけだと思う。このカフェのおかげで女性ファンが増えたのではないか」と感謝した。

ガンダムの顔をイメージした入り口付近では、ファン同士がSNSなどで連絡を取り合い、カードなどのグッズを交換する光景も多かった。都内在住20代女性は「私は3200枚のカードコレククションが自慢です」。併設されているテークアウト専門の「フォーチュンラテカフェ」では、24種類のキャラクターが選べる日付入りカップのドリンク購入に、一時は約30メートル、50人以上が並ぶほど大人気だった。

79年にテレビ放送開始で「ファーストガンダム」と称される“元祖”から、「アムロ・レイ」とガンダムプラモデルを愛してきた50代男性は「生きがいを1つ失った」と無念の表情。「こんなオジサンでも若い子が昔のガンダムの話を興味津々で聞いてくれるんです」。横浜市在住の30代女性も「世代によって思い入れのあるシリーズは違うかもしれないが、他の作品の魅力も教えてもらえる場所でした。私のホームがなくなる感じ。作品も人脈も幅が広がりました」とそれぞれが“最終回”を堪能した。【鎌田直秀】