東日本大震災の発生直後に岩手県大槌町の避難所で出会ってから11年。愛くるしい保育園児だった小松倫子ちゃんは、空手に青春をかける14歳の少女に成長している。

小学校入学と同時に始めた空手は一昨年、黒帯に昇段した。現在は母広子さん(41)が空手教室の送迎をし、稽古にも立ち会うなど、母子の二人三脚で空手に打ち込んでいる。その成果が出て岩手県内の大会(組手)で準優勝。今年2月には町から空手の実力を認められて「体育奨励賞」を贈られた。今月下旬、京都で開催の全国中学生空手道選抜大会には岩手県代表として出場する予定だ。

広子さんは「体作りのため、1年くらい前からスポーツトレーナーに週イチで通って、全身の筋肉をうまく使いこなせる方法を学んでいます。体も強くなってきたし、空手に取り組む意識も変わってきた」と成長ぶりに目を細める。

目指すは文武両道だ。広子さんが「私も勉強は苦手だったけど、いろいろ資格を取るために必死に身に付けた」という暗記法を伝授。その効果が昨年の夏休み明けの試験で早くも出た。倫子ちゃんも「社会の成績が良かった」と納得顔だ。そして「好きな教科は数学と理科。特に理科の実験が好き」と学業の充実ぶりも明かしてくれた。

来月からは花の中3生(小中一貫校なので9年生)に進級する。「将来はスポーツトレーナーや整体師など、スポーツ関係の仕事につきたい」という夢をかなえるためにも、義務教育のラストイヤーは空手と勉強に一層の熱が入る。多忙な毎日、稽古で疲れた体と心を癒やしてくれるのがYouTubeで見る「いれいす」「すとぷり」などのエンタメグループの動画だという。「声がすっごくいい」と、この時ばかりはスポ根少女のよろいを脱ぎ捨て、音楽好きな14歳に戻った。

倫子という名前は「まっすぐに人の道を外れないように。優しい人に育って欲しい」との思いから広子さんが名付けた。「そう育っています。今のところはですけどね…」。こう話した後で、電話口の口調が弾んだ。「倫子はもっともっとできる!」。新年度は母子の二人三脚に一層熱が入りそうだ。【松本久】