日本在住のウクライナ人ユーチューバー「SAWAYAN(サワヤン)」ことトカチョフ・サワさん(26)とトカチョフ・ヤンさん(20)兄弟が3月31日、都内の日本外国特派員協会で会見を開き、ウクライナで軍に入隊した父親への思いを語った。

会見の冒頭、弟のヤンさんがスピーチを行った。「(父は)『俺は戦いに行く。絶対にこの国を守る』と僕に戦争に行くことを告げた」。日本とウクライナを行き来していた父親は2カ月ほど前から、仕事の都合でウクライナのキーウ(キエフ)に帰国していたが「総動員令」を受けて軍に入隊。ヤンさんは「止めても絶対に行くと分かっていたから止めなかった」と語った。

迷彩服を身にまとい、銃を肩にかけていた父の姿をメールの写真で初めて見た。父からの「お前たちが息子で良かった。この人生に後悔はない」の言葉に「僕らはお父さんのそばにいるよ」と返信したという。

同世代のウクライナ兵が命を落としていることに無力さを感じ、ウクライナに行って「義勇兵」に志願することを決意。ユーチューブで3月2日に表明した。動画は31日時点で270万回以上再生された。寄せられたコメントでは「戦争に行く決意をしたのは勇敢だ」「絶対行くべきでない」「動画で発信し続ける方が貢献できる」など賛否が分かれた。視聴者の中学3年生から「一緒に行く」との声もあり、サワさんは「子どもたちに『戦いたい』という気持ちを芽生えさせてしまったことは良いことか分からない」と葛藤も打ち明けた。

ウクライナにいる父親からもすぐ連絡があった。「お前たちが本当に誇らしい。でも、俺はキーウよりも、東京の地で自分の息子たちと再会したい」。2人がウクライナで銃を取って参戦することを望んでいない父の思いを受け「何とも言えない複雑な感情に襲われた」。そして「戦争が本当に憎い」と語った。

戦争を止めるために、2人は動画の配信を続ける。現地の父親や父親の友人からの情報を発信。日本の視聴者からの「考えるきっかけをくれてありがとう」との言葉を胸に、父と同じ覚悟で戦っている。【沢田直人】

 

◆おことわり 日刊スポーツでは1日より、ウクライナの首都の表記を、従来のロシア語発音に由来した「キエフ」から、ウクライナ語発音に近い「キーウ」に変更します。ウクライナが国際社会に「キーウ」への変更を求めてきたことや、「キエフ」が侵攻しているロシア側の呼称であること、日本政府が3月31日、キエフからキーウに呼称変更すると発表したことなどを踏まえました。

 

◆会見でのサワさんの主なやりとり◆

-日本に来た理由は

サワさん 父が大学の時に日本語科で勉強していて、いつか日本で仕事をしたいと思っていた。まず単身赴任で日本に来た。当時の父は、拙い日本語で人脈を広げて、仕事を見つけた。仕事が軌道に乗った時に、僕らが来ました。ヤンは日本に生まれ、僕は4歳から日本にいました。

-ユーチューブの視聴者層は

サワさん 一番多いのは18歳から24歳。高校生から大学生、社会人1年目が約40%。次が13歳から17歳、約20%。それ以外がそれ以上の年齢。男性が80%、女性が20%になります。

-ユーチューブで発信することの魅力は

サワさん 現地に入っている父親がいて、リアルで起きていること、悲惨さであったり現状を最新の状態で、視聴者に発信できる。どこのニュースメディアよりも早く、かつ正確だと思う。僕自身が発信することは父親とか、父親の友人とかリアルな内容になっているので、視聴者の心にも来るんじゃないかなと思います。

-2人が聞いている情報の中で、停戦が同意される可能性は

サワさん 世界各国のトップが戦争を終わらせるためにできることをやっている中、1カ月がたった。(ロシアの)軍が引いているという情報もあるが、最前線では銃撃・砲撃が続いている。早く終わって欲しい気持ちはあるが、まだまだ緊張は抜けないと思っている。ロシアに対する経済制裁が行われている中で、ロシアのトップはどうアクションするのかは予想がつかない。戦争というワードが脳裏によぎらないまでのレベルに持っていくには、長い年月が必要になっていると思います。