将棋の藤井聡太叡王(竜王・王位・王将・棋聖=19)が、タイトル戦初登場となる出口若武六段(27)の挑戦を受ける、第7期叡王戦5番勝負第1局(主催・不二家、日本将棋連盟)が28日、東京・神田明神で行われ、先手の藤井が93手で出口を破り、連覇へ向けて好発進した。出口はタイトル戦初白星を逃した。

戦型は相掛かり。序盤から出口が研究手を繰り出すと、藤井は長考に沈んだ。難解な中盤から終盤の激しい攻防へ。両者とも持ち時間4時間を使い切り、1分将棋に突入。出口は藤井の鋭い踏み込みに粘りを見せたが、寄せきられた。

終局後、出口は中盤の攻防に「違う展開を描いていたけど、誤算に気づいた。一番、息が長く指せる順が本譜かなと思った」と振り返った。

出口は奨励会三段時代の18年、新人王戦決勝3番勝負で藤井と対戦し、連敗して準優勝に終わった。19年にプロ入り後、対藤井戦では連敗が続いたが、20年3月の棋王戦で初勝利を挙げた。大きな自信を得て、4年目でタイトル戦の初舞台に立った。出口のほうが藤井よりも約2年半、プロ入りが遅く、藤井がタイトル戦で対局する初の“後輩”棋士になった。

この日が誕生日だったが、バースデー白星はならなかったが、初のタイトル戦で初体験もあった。「いい環境で(将棋を)指すことができた。ご飯も、泊まるところも、ありがたい。いや、ちょっと将棋のほうをちゃんと指したかった」と苦笑い。

第2局は5月15日に名古屋市で行われる。「もう少し内容を良くして、つぎを迎えたい」と気持ちを切り替えた。