北海道・知床半島沖で乗客乗員26人を乗せた観光船「KAZU I(カズワン)」(19トン)が遭難し、11人が死亡、15人が行方不明となった事故で、27日に記者会見を行った運航会社「知床遊覧船」(斜里町)の桂田精一社長(58)の発した「条件付き運航」について各所から安全管理規定への理解度の低さを指摘する声が上がった。

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水難学会・安倍淳副会長 27日の記者会見での桂田社長の言動、挙動を見ておりましたが果たしてどの程度、安全管理規定について理解できているのか、結局、私には何も伝わってきませんでした。

そもそも、なぜ安全管理規定という書類が、国が規準を設けることなく、旅客船を運営する会社にゆだねているのか。日本は3000キロにわたる長い島国です。北海道から沖縄までそれぞれの海には表情があって、海水の温度、風向きや風力、波の形や強さ、そして海底や沿岸の地形に個性があり、統一した基準は設けられません。

だからこそ、運営各社には出航に関する波と風と視界についての数値を決めさせて、運航ルールを届け出る制度にしているんです。各社の受け持つ命を預かる責任が安全管理規定には詰まっているといっても過言ではありません。

条件付き運航という言葉は安全管理規定の中にはどこにも出てきません。運営会社が出航できない状況で条件をつけて船を出すこと自体、安全管理規定から外れている行為であることに桂田社長は気付いていない。何も理解できずに条件付き運航という言葉を専門用語と勘違いして口に出したという印象しか残らなかったです。

桂田社長は会見で安全管理規定の数値を記者に問われて「数値は出ていない」と言っていました。その手にはおそらく安全管理規定に関する書類だと思われる紙の束を握りながら。

強風と波浪の2つ警報が出ている中で出航を決めた理由もわからず、最終的にこの事故が起こった原因についても数秒黙って「分からない」という結論しか導けなかった。残念です。

旅客に関連する運営会社には、お客さまのそれぞれの人生を運んでいるという意識を強く持っていただきたいと思います。