緊急事態宣言下、要請に従わない飲食店に対し、行政が特措法に基づいて時短営業を命令するのは適法かどうかが争われた裁判で、東京地裁(大須賀寛之裁判長)は16日、104円の国家賠償を求めた原告の訴えを棄却した。しかし、「特に必要があると認められるときに限り」とする命令の発出条件を満たしていないと判断。原告側の「実質勝訴・形式敗訴」となった。原告側は即日控訴した。

訴えていたのは「モンスーンカフェ」など40店舗以上を首都圏に展開しているグローバルダイニング。2度目の緊急事態宣言下の昨年3月18日、都に午後8時以降の営業停止を命じられた。当時、都内では2000店以上が夜間の営業をしていたが、命令が出たのは27店舗。うち26店舗が同社の飲食店だった。同社は見せしめ的な行政処分で、営業の自由を保障した憲法に違反するとして、1日につき1店舗あたり1円(26店舗×1円×4日間)、計104円の損害賠償を求める訴えを起こした。

都は、同社が上場企業で社会的影響力が強いことなどを理由に挙げたが、地裁は「他の飲食店の夜間営業を誘発する恐れがあったとはいえない」と否定。換気、消毒など対策も取っていたことから「市中の感染リスクを高めたとはいえない」と判断した。ただ、小池百合子都知事の命令に過失があったとはいえないとして、訴えは棄却した。

裁判の目的は損害賠償ではなく、一律的な規制を求める社会の風潮や民主主義の在り方を問うこと。判決後、会見した長谷川耕造社長は「主文は棄却だったが、75%は主張を受け入れられた」と話した。控訴審では、小池知事の尋問、聴取を求め、知事の注意義務違反を中心に争いたいとしている。