北海道・知床半島沖で沈没した観光船「KAZU 1（カズワン）」の事故で24日、いったんは海面から20メートルまで引き揚げられたカズワンの船体が海中に落下した。再び沈没した船体は、水深約180メートルの海底で発見された。発見時より約60メートルも深い場所に沈んだことで、作業はさらに困難が予想される。これを受け、水難学会副会長で潜水作業に従事する「朝日海洋開発」の代表取締役の安倍淳氏に聞いた。

安倍淳氏　作業するダイバーも入れ替えて人的補強も必要なのか。最終的には引き揚げを断念するかどうかも含めて、行動計画を立て直すことが求められると思われます。大きなポイントは2つあります。

（1）なぜ落下したのか　支えているワイヤロープのどこからカズワンが外れて落ちたのか。原因究明を早急にして、ワイヤロープの強度なのか、接合部の部品の問題なのか。海には流れがあります。しかもカズワンにかかる水圧などの負荷がどの程度の力が加わるのか。今後、引き揚げたとしても、すべてを引き揚げた方がいいのか、それとも最初のプラン通り網走港までえい航していくのか。

（2）使用するガスの入れ替え　深い場所でダイバーが活動するには「飽和潜水」という特殊作業になります。専用のカプセルで海底へ降下して深度に合わせたヘリウムと酸素を混合したガスを使います。最初は水深120メートルの場所で使う混合比のガスでしたが、同じガスは使えません。深度差60メートルの深さ180メートルに合致する混合比のガスを使わないと酸素中毒を起こしてしまう。180メートルでの作業を想定していないはずなので、新たな混合比のガスをどの程度早く準備できるかが問題となってくるでしょう。