安倍晋三元首相の銃撃事件で、殺人容疑で送検された無職山上徹也容疑者(41)が事件前、安倍元首相の殺害を示唆する手紙を岡山市内から島根県松江市に住む男性に送っていたとみられることが17日、分かった。

男性は、フリージャーナリストの米本和広氏(71)で日刊スポーツの取材に応じ、手紙はA4判1枚で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への強い恨みがつづられ、安倍元首相については「苦々しくは思っていましたが、本来の敵ではない」と記載されていた。

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米本氏によると、手紙はA4判1枚で、印字したものだった。事件から5日後の13日、自宅のポストに届いているのに気づいた。

「ご無沙汰しております」から始まる文章には、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への強い恨みがつづられ、生い立ちなどが理路整然と書かれていた。

安倍元首相については「苦々しくは思っていましたが、本来の敵ではない」「あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの1人に過ぎません」と記載されていた。

米本氏は自身のブログで旧統一教会への批判を展開し、住所も記していた。山上容疑者と面識はないが、手紙には、米本氏のブログの読者であり、過去に投稿欄に書き込んだことがあると記されていた。

手製の銃などを今年の春ごろには完成させていたとの趣旨の供述をしているが、手紙には「銃の入手に(時間を)費やして参りました」と告白。生い立ち、旧統一教会との関わりなどが書かれていた。

「母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産…この経過と共に私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言っても過言ではありません」

岡山市内の郵便局が押したとみられる7月の消印があったが、日付の判読は難しいという。山上容疑者の自宅は奈良市内にあり、7日に岡山市を訪れ、遊説中の安倍元首相を手製銃で襲おうとしたことが分かっている。7日に手紙を投函(とうかん)した可能性がある。差出人名はなかった。

手紙には「安倍(元首相)の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」と殺害を示唆していた。

米本氏は事件について「許されることではない」とした上で、手紙から受けた印象について「文章がすごくまとまっていて、分かりやすい。頭がいいなと思った」と話した。

米本氏はブログで旧統一教会の信者の子どもの問題を取り上げてきたが「悲惨なんてもんじゃない。悲惨を通り越した悲惨」と話し、「だれも相談する人がいなかったのかもしれない。私に友達的なものを感じてくれていたのなら、岡山からならバスで2時間で来ることができる。犯行の前に連絡して相談してほしかった」と話した。【松浦隆司】