東京五輪・パラリンピック組織委員会の高橋治之元理事(78)の会社が、大会スポンサーに選定された紳士服大手AOKIホールディングス(横浜市)側とコンサルタント契約を結び計約4500万円を受領していた問題で、東京地検特捜部は26日、受託収賄容疑で都内の高橋氏宅などを家宅捜索した。強制捜査に乗り出した特捜部は、世界最大のスポーツ祭典を巡る不透明な資金について、解明を進める。

特捜部は広告大手の電通(東京)も捜索した。高橋氏は同社の元専務。電通がスポンサーの募集業務を担当。スポンサーを事実上選定しライセンス商品を審査していた組織委のマーケティング局には、電通からの出向者が多数在籍した。特捜部は、高橋氏がAOKI側の五輪事業参入に向け、電通側に働きかけたかどうか捜査している。高橋氏はこれまでの日刊スポーツの取材に対して「五輪に関する働きかけをしたことはない」などと不正を否定している。

関係者によると、スポーツビジネスの世界で実績がある高橋氏は、AOKI側にスポンサーになるよう打診していたという。組織委は今年6月に解散。清算法人によると、こうした行為は理事として禁じられていないが、特捜部は高橋氏がスポンサーに強い関心を持っていたとみて経緯を調べるもようだ。

AOKI側は17年9月、高橋氏が代表を務めるコンサルタント会社「コモンズ」(東京)と契約を締結し、月額100万円の提供が始まった。18年10月、AOKIはエンブレムの使用権などが与えられるオフィシャルサポーター契約を結んだと発表。19年夏からエンブレム付きのスーツなどを販売し、3万着以上を売り上げた。

組織委の役員や職員は「みなし公務員」とされ、職務に関し賄賂を受け取れば汚職の罪に問われる可能性がある。特捜部の任意聴取を受けたAOKIの青木拡憲前会長(83)は「高橋さんの人としての力に期待した」などと供述。青木氏の部下はライセンス商品の販売のため、高橋氏の力がほしいとの内容を青木氏にメールで伝えていた。