将棋「第35期竜王戦7番勝負第3局」(10月28、29日)の会場となる静岡県富士宮市が9日、「おやつ投票」を開始した。同市は、市制施行80周年記念事業として、藤井聡太竜王(20)の初防衛戦となるタイトル戦を初めて招致した。2日制の対局で、午前と午後の計4回出す機会がある「おやつ」候補を募り、広く投票で選んでもらうことにした。

今回候補となったおやつは、洋菓子部門26品と、和菓子部門12品の計38品。「市内に本店があり、インターネット上で自店のウェブページを有する」「1店舗1品」「年内まで一般の人が購入できるか、食べられる物」「直径30センチ以内の皿に乗せられる」「保存方法は常温か要冷蔵」などの規定がある。

市役所1階の市民ホールに掲示されて、来庁者による投票を18日まで実施する。また、ネット投票は31日まで受け付ける。得票数の多かった候補品のうち、実行委員会が9月15日に実食し、対局中に出すおやつの候補として、和菓子3品程度、洋菓子4品程度を決めるという。

通常のおやつや食事(通称「勝負メシ」)は、対局会場などの主催者側がリストをあらかじめ用意。対局者に決めてもらう。日本将棋連盟によると、その前の段階で「公募・投票制」にするのは、「珍しいケース」という。

投票制について富士宮市役所企画部企画戦略課地域政策推進室の杉村浩之主査(39)は、「藤井さんの食べる物は大変注目される。それなら、実際に投票で選んでもらい、市民全体で盛り上げようと考えた」と説明する。

母親、妹とともに投票に訪れた地元の女子中学生は、「将棋も竜王戦も分からないけど、藤井さんの名前や、藤井さんがかわいいおやつを選ぶことなら知っている。自分が投票したおやつを食べてもらえたらうれしい」と話した。

将棋のタイトル戦で藤井竜王が食べたおやつは売り上げが一気に上がったり、急きょ商品化が決まるなど、影響力は大きい。

富士宮市といえば、2006年(平18)に始まった「B-1グランプリ」に出した「富士宮やきそば」が、ゴールドグランプリに翌年と合わせて連続で輝いている。今回は「おやつ」で、町おこしの絶妙手を引き出せるか。