将棋の羽生善治九段(51)が23日、都内で行われた「経済同友会会員懇談会」で日本将棋連盟会長の佐藤康光九段(52)、森内俊之九段(51)の「羽生世代」レジェンド3人でトークショーを繰り広げた。「将棋の魅力と奥深さを巡って」のテーマで、将棋界の未来や、近年の盛り上げの中心的存在である藤井聡太5冠(20)の躍進などを語った。

羽生九段は16年に14歳2カ月でプロデビューして以降、活躍を続けている藤井5冠に関し、「半世紀ぶりくらいに最年少プロ棋士の記録を塗り替えた。ここ数十年の中で制度的にプロになることが一番難しい時期の中で塗り替えたことがすごい」。さらに「本当にすごいと思うのは、差している将棋にミスが少ない。10代の棋士は粗削りなのが普通だが、先日20歳になりましたけれど、今の時点で完成していてスキがない」と分析した。人柄にも「インタビューの受け答えが10代とは思えない」と会場の笑いも誘い、藤井5冠が発言した「『僥倖(ぎょうこう)』という意味も辞書で調べてしまいました。大人というか立派」と称賛した。

90年代には自身も史上初の7冠を達成するなど、将棋ブームを巻き起こした。当時を振り返り、「佐藤さん、森内さんなど、世代の近いところに強い人がたくさんいるので大変だった思いもありますけれど、棋士の世界は長期戦なので、強い人がいて切磋琢磨(せっさたくま)してやって来られた。1人で走るよりも集団で走ったほうが良いタイムが出るマラソンに似ているところがある」と話した。

羽生九段は今春からツイッターでの発信も開始。すでにフォロワー数25万人と人気だ。「将棋の世界は、道場や大会に行くことに敷居が高いと思っているようなので、もう少しカジュアルに始められるものが増えていけばいい」。若年層などを含め、将棋に興味を持ってもらう入り口を広げる普及も目的の1つだ。「コメントでアンケートも出来るんです。すぐに反映出来る魅力です」とファン接することが出来る場を増やしていることも明かした。

森内九段はゲームで日本だけでなく世界を制したことを公表しながら「最近は将棋よりも勝っている気がします」と趣味の話で盛り上げた。佐藤九段も約30年前の免許取り立ての時に、ノーマルタイヤで栃木・日光市での対局に向かい、いろは坂を上ることを断念し、タクシーで会場へ。帰路は東京まで羽生九段、森内九段を乗せ、首都高速初運転などヒヤヒヤ状態だった秘話を披露した。【鎌田直秀】