日本棋院は13日、同院の囲碁棋士養成機関「院生」の柳原咲輝(さき)さん(11)を女流特別採用推薦棋士として採用すると発表した。来年1月1日付で初段として公式戦に参加でき、現役の女流最年少棋士としてプロデビューする。

柳原さんは2020年(令2)7月から院生となった。今年1月まで行われていた女流特別採用棋士採用試験では張心治初段(12)との直接対決に敗れ、惜しくもプロ入りを逃した。その悔しさをバネに今年5月期、7月期、9月期と院生最上位のAクラスに在籍。8月には第37回「ワールドユース囲碁選手権」の年少の部で準優勝した。院生および院生経験者を対象とした女流特別採用推薦棋士として、プロでもある院生師範4人全員が推薦に値するとの意見でまとまった。

3歳の時、囲碁のできる両親から柳原さんは手ほどきを受けた。「5歳くらいからプロになりたい」と家庭や周囲に話していたいう。現在は都内のある洪清泉四段(40)の道場で修業している。藤沢里菜女流本因坊(23)や一力遼棋聖(25)、現在名人戦に挑戦中の芝野虎丸九段(22)ら、先輩もいる。

洪四段は、「サキは、時間さえあれば碁盤に向かって勉強している。まじめな棋風が盤上に表現されている。さらに攻撃力が身に付けば、タイトルを獲得できるだけの実力の持ち主」と評している。

この推薦制度、3年前から始まった。各年度1人の採用試験とは違い、19年度に辻華二段(22)大森らん初段(20)ら6人、20年度は柳原と同じ洪道場で学ぶ大須賀聖良初段(18)ら4人、21年度は鈴川七海初段(19)と、NHKEテレ「囲碁フォーカス」の聞き手でもある安田明夏初段(20)、22年度は櫻本絢子初段(20)がプロ入りした。このうち、19年度組と20年度組の10人はすでに公式戦で本戦入りするなど、タイトル争いに絡んでいる。

19年度には、仲邑菫二段(13)も英才特別採用棋士制度(小学生が対象。内外での実績と将来性、試験対局でふさわしい資質と棋力があると認定された者で、日本棋院の棋士2人以上の推薦が必要。現役の7大タイトル保持者、ナショナルチームの監督、コーチ3分の2以上の賛成も必要)で棋士となった。今年4月には女流名人戦挑戦者、7月には扇興杯準優勝と結果を出している。「近い将来、仲邑さんとタイトルを争う日が来ますよ」(洪四段)。

柳原も「仲邑菫先生のライバルになれるように頑張りたいです。藤沢里菜先生とも打ってみたいです」と、会見で抱負を語った。あこがれの棋士は現在、世界一の女流棋士と言われ、男性棋士とも互角に戦える崔精(チェ・ジョン)九段(韓国=25)。「できるところまで頑張りたいです。世界で戦える棋士になりたいです」とも話していた。

◆柳原咲輝(やなぎはら・さき)2010年(平22)10月6日生まれ、東京都出身。3歳で両親から囲碁を学ぶ。20年7月に日本棋院の棋士養成機関「院生」に。22年1月、女流特別採用棋士試験は次点。8月の第37回ワールドユース選手権の年少の部準優勝。女流特別採用推薦棋士として、来年1月から公式戦に参加可能。好きな食べ物は、おすしとラーメン。趣味は昨年、東京五輪を見て始めた卓球と、「名探偵コナン」を読むこと。