羽田空港で保安検査場の30代女性検査員の肩を手で押すなどした暴行の疑いで、現行犯逮捕、送検された元プロ野球選手の村田兆治さん(72)が25日、釈放された。警視庁東京空港署は任意で捜査を続ける。

村田さんは午後5時半ごろ、東京空港署の入り口で報道陣の前に立ち、2度にわたって深々と頭を下げた。グレーを基調としたチェック柄のスーツに黒いスラックス、白いワイシャツに黒のネクタイ姿。神妙な面持ちで時折身ぶり手ぶりも交えながら、1分20秒間、謝罪の言葉を述べた。

「ご心配とご迷惑をおかけしたことは事実」。直立から腰を90度曲げて、約5秒間、一礼した。署や空港関係者によると、逮捕容疑は23日午後、羽田空港第1ターミナル北ウイングの保安検査場で、女性検査員の左肩を右手で押すなどした疑い。逮捕直後には「肩を押していない」と容疑を否認していた。

「暴力だと言われた女性の腕を押したということでの逮捕。もう1度、彼女に誠心誠意謝りたい。それが第一」。独特のダイナミックな投球フォーム「マサカリ投法」で、プロ通算215勝を挙げた。身長181センチの屈強な体格での行動を反省し、被害を受けた女性への謝罪を最優先した。村田さんは携帯電話を手にしたまま保安検査場の金属探知機に何度も引っかかったことで、トラブルになったとみられている。

「もう1つは、たくさんのファンの方々、子どもたちに、イベントなどで、夢を持って希望を持って頑張れと言っていることに関して、今回の私の逮捕は非常に遺憾だと思いますし、あらためて深くおわびしたい」。引退後は数多くの社会貢献活動を行ってきた。名誉会長として全国離島交流中学生野球大会を開催したり、各地での野球教室などで触れ合ってきた子どもたちにも謝罪した。本来であれば、この日も、北海道・芦別市民球場で開催される宝くじスポーツフェア「ドリーム・ベースボール」に、プロ野球OBで構成するドリームチームの監督として参加し、芦別市選抜チームとの対戦や野球教室などを行うはずだった。

最後に再び背筋を伸ばして深く一礼し、迎えの車の後部座席に乗り込んだ。

◆村田兆治(むらた・ちょうじ)1949年(昭24)11月27日生まれ。広島県本郷町(現三原市)出身。福山電波工(現近大広島高福山)から、67年度ドラフト1位で東京オリオンズ(現ロッテ)入団。マサカリ投法と呼ばれる独特のダイナミックな投球フォームから剛速球とフォークを操り、プロ通算215勝177敗33セーブ2363奪三振、防御率3・24。最多勝1回などタイトル多数。右ひじ手術を乗り越え、85年カムバック賞。通算148暴投はプロ野球記録。40歳まで現役を続けて名球会入り。05年野球殿堂入り。解説者としても活躍。右投げ右打ち。