「ひふみん」こと、将棋の加藤一二三・九段(82)が、文化の向上発達に関し、特に功績顕著な「文化功労者」に選ばれた。将棋界では、1990年(平2)の大山康晴十五世名人(故人)に次いで2人目。

会見に応じたひふみんは、「大変喜んでおります。棋士として戦いの場を与えてくださった皆さまに感謝しております」と笑顔を見せた。16年に藤井聡太5冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖=20)が14歳2カ月の史上最年少でプロ入りを決めるまで、14歳7カ月と最年少プロ記録の持ち主だった。54年8月のデビューから17年6月に引退するまで約63年にわたって戦い続け、通算1324勝1180敗。対局に臨むにあたり、「負ける気はしなかった」という。

最も印象に残っているのは中原誠名人を下し、初の名人を獲得した82年の名人戦7番勝負第7局。「名人獲得を目指して精進していた。それがかなったのは最もうれしかった」と振り返った。

藤井の出現で、将棋界は脚光を浴びている。「藤井さんと戦えるチャンスがあれば、元気いっぱい喜んで戦います。私の得意としているヒネリ飛車で、五分に渡り合えるかな」。勝負師としての闘志は、少しも衰えていない。

盤から離れて5年、今も最新将棋の研究は続けている。「藤井さんの将棋の研究や解説、どんなことでも喜んで引き受けたい。指し手の執筆もして、後進の益(えき)になればいいと思います」。日本が世界に誇る将棋という文化の向上に、まだまだ尽力していく。【赤塚辰浩】