素性を隠して日々、ラジオ番組のトークをせっせと書き起こし、インターネットにアップし続ける「謎のラジオ書き起こし職人」。それが、みやーんZZさんだ。なぜ、そんなことを? ラジオ局に怒られませんか?

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番組の書き起こしについて、ラジオ局はどう考えているのか。

各局、一部でも放送そのものをインターネットにアップする行為に関しては「絶対にNG」と口をそろえるが、書き起こしは「許可は出さないが、ダメとも言わない」(在京AM局)、「局としてオフィシャルにコメントはできない」(同FM局)と歯切れが悪い。

番組に「ただ乗り」するような書き起こしサイトは、自社の権利や利益を侵害するおそれがある。一部を切り取られて炎上すれば、出演者に被害が及びかねない。一方で、無料で番組を宣伝してくれるありがたい存在でもあり、番組への接触機会の拡大、新規ファンの開拓にもつながる。

あるAM局の広報担当者は「グレーな存在ではあるが、実際にメリットもあるので、炎上した時だけ『やめろ』とは言えない。公式にコメントするのは難しいが、あえて言うなら『しょうがない』といったところです」と黙認の姿勢だ。

こうしたラジオ局の対応について、著作権に詳しいレイ法律事務所の河西邦剛弁護士は「著作権法上、特に論点となるのは、書き起こしが『複製』に当たるかどうかだ」と言う。著作権法は放送事業者(ラジオ局)の権利として「放送にかかる音、または影像を録音し、録画し、または写真その他これに類似する方法により複製する権利を専有する」(98条)と定めている。音声素材の複製、配信は明らかに権利侵害に当たるが、書き起こしが「類似する方法による複製」と言えるのかどうか、という点だ。

河西弁護士は「書き起こしが、録音、録画と類似する方法といえる可能性は低い。しかし、ネット上のコンテンツをまとめた、いわゆる『まとめサイト』が違法と判断された例もあり、番組内容をそのまま書き起こせば、複製に当たると判断される可能性もないとは言えない。にもかかわらず、ラジオ局が黙認しているのは、メリットにもなるので被害申告せず、許容しているからだと考えられる」と話している。