岸田文雄首相は8日、官邸で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡る被害者救済に向けた新法整備について「今国会を視野にできる限り早く、法案を国会に提出すべく最大限努力する」と表明した。岸田氏は官邸内で公明党の山口那津男代表と会談を行い、「社会的に許容しがたい悪質な勧誘行為の禁止」、「悪質な勧誘行為に基づく寄付の取り消しや損害請求を可能とする」、「子や配偶者に生じた被害救済」の3点について合意したことを明らかにした。

また教団による被害者と面会したことを明かし、「凄惨(せいさん)な経験を直接伺い、政治家として胸が引き裂かれる思いがした」と述べた。その上で「被害者救済と再発防止のために、新たな法制度実現に取り組む決意をした」と強調したが、11日から予定している東南アジア外遊前に旧統一教会問題に対して前向きな姿勢をアピールする思惑が透ける。

岸田氏の会見中に被害者救済へ向けた自民、公明、立憲民主、日本維新の会による6回目の4党協議会がスタートしたが、マインドコントロール(洗脳)の定義などを巡って、与党側と野党側の食い違いは埋まらず、約1時間40分におよんだ。出席した立民の長妻昭政調会長は「マインドコントロールの認定が難しい」とする与党側の主張に対して14日までにマインドコントロールの定義などについて具体的な要項提出を求めた。

長妻氏は「問題は中身。本当に救済につながるものができればいい。日本人が食い物にされている」と訴えた。その一方で出席した自民党議員は岸田氏の会見の模様を見ながら「総理から何も聞いていない」と説明するなど官邸と与党側との意思疎通が欠けていることも判明し、被害者救済へ向けた今国会での法整備に不安材料が浮かび上がっている。【大上悟】