岸田文雄首相は20日夜、政治資金をめぐる複数の問題や疑惑を抱える寺田稔総務相(64)を更迭した。首相公邸を訪れた寺田氏から辞表を受け取り受理した。

取材に「相次いで閣僚が辞任することになり、深くおわび申し上げる。私自身、任命責任を重く受け止めている」と謝罪した上で「国民の批判を真摯(しんし)に受け止めながら一層の緊張感をもって政権運営に当たっていく」と述べた。

後任は、麻生派の松本剛明元外相(63)を充てる方針で、21日に表明する。政権では先月24日に山際大志郎経済再生相、今月11日に葉梨康弘法相が辞任しており、約1カ月で3閣僚が辞任する「ハイペース辞任ドミノ」に。過去には閣僚の辞任が続いた政権が退陣した例もあり、首相が受けるダメージははかりしれない。寺田氏と葉梨氏は岸田派所属。内閣の岸田派枠は3人から1人に激減した。

首相にとって、22年度第2次補正予算案審議や、旧統一教会の被害者救済新法や安全保障3文書改訂など重要課題が控える中、寺田氏の問題を国会審議に影響させないためには、20日中の決着が不可決だった。

ただ、寺田氏は政治資金規正法を所管する総務相ながら「政治とカネ」の問題を抱え、説明も不十分で与野党から辞任を求める声が出ていた。それでも首相の判断は山際氏や葉梨氏の時と同じく、またギリギリ。「決断力の遅れ」は、首相の政権運営力をさらに困難にする可能性がある。

一方、寺田氏は「(10増10減)区割り法成立を1つのけじめとした。岸田内閣を支えたい思いと、私の問題が支障になってはならない思いが交錯していた」と語った。疑惑の調査は続け、結果は公表するという。寺田氏は岸田派の源流・宏池会を創立した池田勇人元首相の孫を妻にしており、首相の側近でもある。自民党関係者は「山際、葉梨両氏の辞任よりも、かなり深刻な事態だ」と話した。