「半導体」に関する話題が増えています。今や身の回りのあらゆるモノに使われ、社会を支える重要なカギの1つ。知っておきたいニュースを、まとめてみました。

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官民が総力を挙げて次世代半導体の製造、そして日本の半導体産業の復活を目指そうという新会社が「Rapidus(ラピダス)」です。ラテン語で「速い」の意味。専門家集団が設立し、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、NEC、デンソー、ソフトバンク、キオクシアホールディングス、三菱UFJ銀行の8社が計73億円を出資し、政府が当面700億円を支援します。会長は東哲郎氏、社長は小池淳義氏。2人は11月11日の会見で「5年後の2027年に次世代半導体の生産を始める」などと表明しました。

目標や進め方については、<1>米IBMなどと連携し2ナノメートル世代のロジック半導体の技術開発を行う。<2>22年度は2ナノメートル世代の技術を獲得。パイロットラインの初期設計を実施する。<3>研究開発終了後は先端ロジック半導体のファウンドリ(製造工場)として事業化を目指すとし、「最初の5年間は、日米連携で2ナノメートルの技術を勉強。人材も拡充していきます。残りの5年間で事業計画を展開」と説明しました。2ナノメートルの先端半導体が、社会でどう使われるのかについては、クラウドコンピューティング、自動運転、AIなどを挙げました。

世界をリードする台湾のTSMCや韓国のサムスン電子などを目指すのかとの問いには「規模感でTSMCやサムソンを追いかけることはしません。差別化を考えています。絶えず、先端技術を開発していくことが大切。我々は先端の3世代くらいしかやりません。大規模な工場をバンバン造るのではない」などと答え、収益性の高い最先端半導体の生産に集中していく考えを示しました。

小池氏は、日本の遅れについて「残念ながら10年~20年近く遅れを取ってしまいました。取り戻すのはそう簡単ではありません。しかし、我々が得意な物づくりと調和して、全世界に貢献できる最後のチャンスだと考えました」と意欲を語りました。また、これまでの失敗例を振り返り「これまでは日本だけ、閉じた世界で解を見つけようとした。そうではなく、世界と連携をし、最先端の半導体の量産を通じて日本の産業力を強化し、世界の物づくりをリードしていく」「日本には半導体をちゃんとつくれる技術はあると確信しています。ただ自国だけですべて解決できることはないということを、痛いほど分かりました。最後のチャンスなので成功させたい」などと強調しました。

工場を建設するには兆円レベルの資金が必要で、ラピダスも政府に、長期的な資金的サポートを期待しています。

 

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▼世界最大級メーカーTSMCが熊本県に工場

半導体の巨人、台湾積体電路製造(TSMC)は、1987年設立。注文を受け顧客の設計に基づいて生産だけをする受託製造のファウンダリ企業として、世界をリードしています。優れた微細化技術で知られ、主な顧客にはアップルもいて、9月発売のiPhone14にもTSMCの半導体が使われています。世界からあらゆる種類の注文が増えているほか、中国による台湾有事の危機も高まったことから、米国などで工場の新設を進めています。

日本でも、茨城県つくば市に「3DIC研究開発センター」を設立。半導体製造の後工程における3次元パッケージ技術を、日本の素材や装置のメーカーなどとも共同研究するそうです。熊本県菊陽町には、新工場(JMSM)も建設しています。今年4月に着工。23年9月完成、24年12月出荷開始予定。投資額は約1兆円で、政府も最大4760億円の助成金を出します。ソニーグループやデンソーも出資。製造する回路線幅は少し前の世代の12~28ナノメートルの予定と言われ、自動車や家電向けとみられています。

面積は約23万平方メートル。約1200人の雇用を計画し、25年から5年間の同県の経済効果は約2・4兆円ともいわれます。既に関連企業の進出が相次いでいて、今年7月には工場地として地価上昇率が全国1位に。人口も増加しています。

 

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▼習近平氏 台湾統一は「必ず実現」

中国は8月、米ペロシ下院議長の台湾訪問に反発し、台湾を取り囲むような6カ所の海域と空域で大規模軍事演習を実施しました。また10月の中国共産党大会で、習近平国家主席は、台湾について「祖国の完全な統一を果たすのは歴史的任務」と言及。できる限り平和的な統一を目指すとしながらも「武力行使の放棄は約束しない。あらゆる必要な措置を取る選択肢を持ち続ける。祖国の完全な統一は必ず実現しなければならないし、必ず実現できる」などと強調しました。

また「製造強国」の建設加速も表明し、自前で安定したサプライチェーン(供給網)を築く構えもみせました。注力する分野として、量子コンピューターや宇宙開発などを挙げ、優秀な人材獲得にも意欲をみせています。

一連の中国の動きを受けて、米ブリンケン国務長官は最近、中国が従来考えられてきたよりも「はるかに速い時間軸で統一を追求することを決意した」と警戒感を強調。世界の商業海運における台湾海峡の重要性や台湾の半導体生産に触れ、「台湾の生産が中断されれば、世界中で経済危機が発生する」などとも話しています。

一方の台湾では、11月26日投開票の統一地方選で蔡英文総統が率いる与党、民主進歩党(民進党)が大敗し、蔡氏が党主席(党首)の辞任を表明。総統については責任を果たしていくとしています。24年に予定される総統選に向け、民進党の後任候補選びや、最大野党の国民党の動向が注目されます。また蔡政権を嫌う中国が今後、総統選に向けて、どう動くのかも注視されています。