世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡る被害者救済新法案と消費者契約法改正案は10日、参院本会議で自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主の5党などが賛成(共産党、れいわ新選組は反対)して可決、成立した。

異例ずくめの成立劇だった。会期末、土曜日の午前9時から岸田文雄首相が出席し、参院消費者問題特別委員会で与野党の質疑に応じた。休日に国会審議が行われるのは1994年1月29日以来、28年ぶり。

特別委は昼休憩をはさんで午後2時30分すぎまで駆け足で行われ、賛成多数で可決された後に参院本会議に緊急上程された。法案は5日に衆院審議入り、8日に衆院本会議で可決、成立した。両院成立まで6日間という異例の早業だった。

両法案は岸田氏が会期中の成立を掲げ、与党が立民、維新に呼びかけ、異例の与野党による実務者協議で詰めの作業を急いだ。自民党の茂木敏充幹事長は「できる限り野党の意見も反映した。実効性のある法律にできた」と強調した。一方で立民の泉健太代表は「十分ではない。まだまだ、やらなくてはいけないことがあるという問題意識はある」と課題を指摘した。

法案では「霊感」などで不安をあおる不当な寄付勧誘行為の禁止、また借金や住居、生活に不可欠な資産を処分して寄付の調達を求めることも禁止した。違反した場合には1年以下の拘禁刑や、100万円以下の罰金が科される。だが、元2世信者の小川さゆり(仮名)さんや全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護団らからは「実効性」に疑問の声を上げる。

会期中に山際大志郎前経済再生相、葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相が「旧統一教会との複数の接点」、「失言」、「政治とカネの問題」などから相次いで事実上の更迭となるなど政権は大揺れの中、異例ずくめの69日間に幕を下ろした。【大上悟】