藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)が羽生善治九段(52)の挑戦を受ける、将棋の第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局が9日、静岡県掛川市「掛川城二の丸茶室」で行われた。8日午前9時からの2日制で始まった対局は、9日午後5時47分、先手藤井が91手で勝ち、初防衛に向け、好スタートを切った。本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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「秀才型の天才」同士の対決第1ラウンドは、藤井王将の方が羽生九段よりも総合力で上回っていた感じがします。羽生九段が練りに練ってきた、一手損角換わりの将棋は久しぶりに見ました。これに対し、藤井王将は早繰り銀でお手本のような対応を示してくれました。

4筋の銀の成り込みに対しても、自陣の銀打ちで守りを固め、7筋から6筋への桂跳ね、自玉を金3枚と銀1枚で固める手堅さ。ひと呼吸置き、しっかり受けて陣形を整えました。終盤の鮮やかな攻めも魅力ですが、タイトル戦という大きな舞台で戦うたびに、攻めと守りのタイミングがうまくなっている気がします。自玉が上部へと脱出したり、しっかりと受けつぶすとか、局面に応じた正確な勝ち方を身につけてきているという印象です。

羽生九段は封じ手直後、3筋に歩を直接打ち込んだ手がどうだったのか。飛車取りに持ち駒の銀を打って下げさせてから、3筋への歩成を見せた方が、良かったかもしれません。

シリーズの流れを左右する初戦に向けて準備してきた羽生九段の作戦を、次に後手番となる第3局で連続採用するのは厳しそうです。第2局は先手番ですし、別の作戦で巻き返せるのか。大いに期待します。